ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC 流し読み】終末期でもスタチンは中止されるか

Discontinuation of Statins in Veterans Admitted to Nursing Homes near the End of Life
J Am Geriatr Soc. 2020 Aug 12. doi: 10.1111/jgs.16727.

背景/目的:余命が限られている人(LLE)や認知症進行期(AD)の人にはスタチンを使用しないことが推奨されている。この研究では二次予防のためのスタチン内服をしている人を対象に老人ホーム入所後のスタチンが中止されているかを予測する要因を検討した
デザイン:後ろ向きコホート研究。
設定:冠動脈疾患,脳卒中,または2型糖尿病がある65歳以上の退役軍人で2009~2015年度に入所しLLEかADの基準を満たし,入所後1週間以内にスタチンが処方されていた人(13110人)
測定:スタチンの投与状況,死亡か退院による打ち切り,入所91日後,試験期間終了時,などの状況を確認した
結果:91日目までに31%でスタチンが中止された。ホスピス使用群のほうがスタチン中止率が有意に高かった(52% vs 25%)。ホスピス使用群では肥満,心不全,非病院からの入所の場合は中止されにくく,進行認知症,ADL障害,多い薬剤の服用などは中止されやすかった。ホスピス非使用群は高齢や予後不良群は中止されやすく,肥満患者は中止されにくかった。
結論:二次予防のためにスタチンを服用しているLLE/ADの人のほとんどでスタチンが中止されなかった。予後不良,ホスピス使用,予後不良因子などがあると中止されやすい。

 
 

J-COSMO Vol.2 No.6でジャーナルクラブを執筆

J-COSMO Vol.2 No.6でジャーナルクラブを専攻医の矢澤先生と共に執筆させていただきました

これまでは症候学をベースに書かせていただいたのですが,休刊ということで「総合診療医のエビデンス」をテーマに家庭医療とホスピタリストのエビデンスを書かせていただきました

 

J Community Hosp Intern Med Perspect. 2019 Apr 12;9(2):121-134.
Intern Med. 2019 Dec 1;58(23):3385-3391.
JAMA Intern Med. 2019 Mar; 179(3): 363–372.
JAMA Intern Med. 2019 Apr 1;179(4):506-514.


毎号とても学びなる内容だったので休刊は非常に残念なのですが,今回もじっくり読ませていただきました。Special topicもふくめ非常に熱い内容でした!!

https://www.amazon.co.jp/dp/4498930118/

「薬剤性転倒のリスク評価,予防,対策」を執筆させていただきました

ペインクリニックという雑誌で11月号に総合診療医としての立場で「薬剤性転倒のリスク評価,予防,対策」を執筆させていただく機会をいただきました(ペインクリニック 41:1459-1469.2020)

「転倒」だけですごい情報量になるので,どうまとめるか,どういうメッセージにするか...で色々悩みぬいてつくった原稿なのですが無事一つの形にはなったのかなと思いました。自分の知識の再確認と整理のよい機会になりましたし,「転倒」は個人的には色々熱いポイントあると思っています。

貴重な機会をいただいただけでなく,読みやすい原稿に調整していただき真興交易(株)医書出版部のみなさま本当にありがとうございました。

http://www.sshinko.com/magazine/?p=2327

バリウム虫垂炎に関して

バリウム虫垂炎に関して


バリウム造影の4日から4年という報告(J Clin Gastroenterol 1987;9(4): 447–51)もあれば,バリウム造影6時間後の報告(Intern Med 2015;54:1571)もあったようです

台湾の大規模研究では

The Association Between Barium Examination and Subsequent Appendicitis: A Nationwide Population-Based Study
Am J Med. 2017 Jan;130(1):54-60.e5.

2ヶ月までならOR 9.72
12ヶ月までならOR 2.11
それ以降は有意差なし

という報告でした。
この論文に関しては山岸先生のブログがまとめまっていて,おすすめです
http://hospitalist-gim.blogspot.com/2016/12/2.html

で、虫垂炎のなかでどれくらいの頻度?と思って調べてみたら3%のようでした

Barium appendicitis: A single institution review in Japan
World J Gastrointest Surg. 2016 Sep 27;8(9):651-655.

東京ベイ・浦安市川医療センターで2013-2015年の3年間の虫垂炎の後ろ向き研究

バリウム虫垂炎の定義は1-3すべてを満たす症例
1.急性虫垂炎の診断
2.バリウム検査を受けた病歴がある
3.CTスキャンで虫垂に高吸収域の物質が見られる。

396例のうち12例(3%)がバリウム虫垂炎だった
バリウム虫垂炎の虫垂内の高吸収域のCT値の中央値は約1万(3066-23423HU)
正常虫垂炎の虫垂内のCTの中央値は393(100-2151)
病理での壊疽性虫垂炎の頻度は普通の虫垂炎と同じ
穿孔は33.3%と普通の虫垂炎より高い傾向(18.8%)にあったが有意差はつかず

 
ということでバリウム虫垂炎
・おそらく頻度は稀だがバリウムに関連して虫垂炎の発症リスクが上昇する
・検査後1年(特に二ヶ月以内)リスク上昇
虫垂炎全体のほうからみると3%と少なくない(医原性という観点でみると個人的には多いとも解釈できる!?)
・虫垂内のCT値は3000HU以上,平均1万HU
ということでした
 

【JC:FRID:Fall-Risk-Increasing Drugsのメタアナ&システマティックレビュー3論文】

 

Fall-Risk-Increasing Drugs: A Systematic Review and Meta-Analysis: I. Cardiovascular Drugs
J Am Med Dir Assoc. 2018 Apr;19(4):371.e1-371.e9.

調整済みOR
ループ利尿薬 1.36
β-blocker 0.88

調整なしOR
ジギタリス OR 1.60
ジゴキシン OR 2.06
スタチン OR 0.80

Fall-Risk-Increasing Drugs: A Systematic Review and Meta-Analysis: II. Psychotropics
J Am Med Dir Assoc. 2018 Apr;19(4):371.e11-371.e17.

抗精神病薬 1.54
抗うつ薬 1.57
TCA 1.41
SSRI 2.02
BZO 1.42
短時間作用型BZO 1.21
長時間作用型BZO 1.81

Fall-Risk-Increasing Drugs: A Systematic Review and Meta-analysis: III. Others
J Am Med Dir Assoc. 2018 Apr;19(4):372.e1-372.e8.

鎮痛薬 1.42 NS
NSAIDs 1.09 NS
オピオイド 1.60
抗パーキンソン 1.54
てんかん 1.55
ポリファーマシー 1.75

PPIの長期使用とオピオイド使用開始初期は転倒リスク上昇の可能性あり
下剤と転倒との関連ははっきりせず

【Case report】 COVID Blindness: Delayed Diagnosis of Aseptic Meningitis in the COVID-19 Era

EJCRIMにアクセプトいただいたCOVID-19 vs 無菌性髄膜炎の症例,Publishされました!!


御指導いただいた和足先生,宮上先生,綿貫先生,志水先生,弘重先生ありがとうございました!!
https://www.ejcrim.com/index.php/EJCRIM/article/view/1940

 

ケースはシンプルといえばシンプルかもしれませんが,COVID-19に絡めた視点で考察させていただきました

JC ポリファーマシーへの介入:SR+Meta-analysis

Deprescribing for Community-Dwelling Older Adults: a Systematic Review and Meta-analysis.

J Gen Intern Med. 2020 Aug 20. pii: 10.1007/s11606-020-06089-2.

doi: 10.1007/s11606-020-06089-2. 

 

背景:ポリファーマシーと不適切な薬の使用は転倒,入院,認知機能障害,死亡のリスクの増加と関連している。地域居住の高齢者における減薬介入の有効性,有効性の比較,有害性を評価すること

方法:1990-2019年2月のOVID MEDLINE Embase,CINAHL,コクランで減処方の介入と通常ないし他の介入と比較した研究を検索した。一次アウトカムは全死亡,入院,QoL,転倒。二次アウトカムはPIMs。介入は包括的な薬のレビュー,教育的な取り組み.コンピューターによる意思決定支援に分類された。1人の研究者によって抄録されたデータは,別の研究者によって検証された。各研究のバイアスのリスクの評価にはコクラン基準を使用し,主要アウトカムについてはGRADEシステムを用いてエビデンスの確実性(COE)を判定した。

結果:バイアスのリスクが低・中程度の臨床試験が38件含まれた。 包括的な薬剤レビューは全死亡を減少させる(OR 0.74 COEは低),転倒,QoL,入院には影響を与えない(COEは低-中).13の研究のうち9の研究ではPIMが減少したと報告されている。教育的介入は全死亡,入院,QoLには効果がなく(COEは低-中),転倒に対する効果は不明(COEは非常に低い)。PIMは全ての研究で減少した。4つのコンピュータによる意思決定支援試験のうち2つの試験では介入群でのPIMの報告数が少なかったが,いずれの試験でも主要アウトカムは報告されていなかった。

議論:65歳以上の地域居住者においては、薬物の再処方介入により、死亡率および潜在的に不適切な薬物の使用がわずかに減少する可能性がある。