ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

バリウム虫垂炎に関して

バリウム虫垂炎に関して


バリウム造影の4日から4年という報告(J Clin Gastroenterol 1987;9(4): 447–51)もあれば,バリウム造影6時間後の報告(Intern Med 2015;54:1571)もあったようです

台湾の大規模研究では

The Association Between Barium Examination and Subsequent Appendicitis: A Nationwide Population-Based Study
Am J Med. 2017 Jan;130(1):54-60.e5.

2ヶ月までならOR 9.72
12ヶ月までならOR 2.11
それ以降は有意差なし

という報告でした。
この論文に関しては山岸先生のブログがまとめまっていて,おすすめです
http://hospitalist-gim.blogspot.com/2016/12/2.html

で、虫垂炎のなかでどれくらいの頻度?と思って調べてみたら3%のようでした

Barium appendicitis: A single institution review in Japan
World J Gastrointest Surg. 2016 Sep 27;8(9):651-655.

東京ベイ・浦安市川医療センターで2013-2015年の3年間の虫垂炎の後ろ向き研究

バリウム虫垂炎の定義は1-3すべてを満たす症例
1.急性虫垂炎の診断
2.バリウム検査を受けた病歴がある
3.CTスキャンで虫垂に高吸収域の物質が見られる。

396例のうち12例(3%)がバリウム虫垂炎だった
バリウム虫垂炎の虫垂内の高吸収域のCT値の中央値は約1万(3066-23423HU)
正常虫垂炎の虫垂内のCTの中央値は393(100-2151)
病理での壊疽性虫垂炎の頻度は普通の虫垂炎と同じ
穿孔は33.3%と普通の虫垂炎より高い傾向(18.8%)にあったが有意差はつかず

 
ということでバリウム虫垂炎
・おそらく頻度は稀だがバリウムに関連して虫垂炎の発症リスクが上昇する
・検査後1年(特に二ヶ月以内)リスク上昇
虫垂炎全体のほうからみると3%と少なくない(医原性という観点でみると個人的には多いとも解釈できる!?)
・虫垂内のCT値は3000HU以上,平均1万HU
ということでした