ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

利用可能バイアスに関して(Memo)

●利用可能バイアスに関して

□vs診断エラーに関して(私見ふくむ)

一般論として知識や技術の不足からくる診断エラーは11%(知識が4%,読影などの技術が7%)ということになっています(Arch Intern Med. 2005;165:1493–1499)

ですが自験例ふくめどうもそうじゃないんじゃね?と個人的に思っています。


(HALTチェックなど)de-biasも大事なのは言うまでもないのですが、Medicalの部分をきっちりつめれば強引な(結果として間違える)診断プロセスを回避できることもあります。

最近の文献的には

・バイアスを認識することを目的とした教育戦略は、エラーを減らすことには効果がないが、逆に、エラーを減らすための知識の再編成に焦点を当てた戦略は、わずかだが効果がある(Acad Med. 2017 Jan;92(1):23-30.)

・Debias戦略やポイント毎のチェックよりは知識と経験の習得と統合の改善に焦点を当てるべき(Diagnosis (Berl). 2019 Jun 26;6(2):151-156.)

という雰囲気を感じます。そうはいってもde-biasが意味ないかというと、これはこれで効果あるんじゃね?とおもっています。

 

おそらく


□illness scriptの強化

短期Outcome改善のエビデンスあり
長期Outcome改善は不明
疾患特異的なものなので,そう長い間得られた知識が変化することはない
疾患特異的なものなので,使えるシーンは限定的

□debias戦略

短期Outcome改善のエビデンスは現状ない
長期Outcome改善は不明
debias戦略自体は身につければ患者さんの症状/徴候にかかわらず使える
どれくらい使えるかは場合による(状況次第?症例次第?)

このような感じなのかなとイメージしています。

で、今回は強力なバイアスの一つ利用可能バイアスに関してちょっとまとめてみました(ハッスル/感情系、早期閉鎖/アンカリング、Diagnostic momentumあたりも相当強いバイアスですよね)


●利用可能バイアス

→想起しやすい事柄を優先して評価してしまう認知バイアス
例:インフルエンザ,ノロ,COVID-19など流行性疾患が流行している時に鑑別のメインに考える
例:最近経験した症例やカンファレンスで出た症例を鑑別のメインに考える..


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32776898/
The effect of prior experience on diagnostic reasoning: exploration of availability bias
Diagnosis (Berl). 2020 Aug 27;7(3):265-272.

医学生はともかく研修医やスタッフの診断精度は、事前暴露/availability biasの影響を受けていなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20841533/
Effect of availability bias and reflective reasoning on diagnostic accuracy among internal medicine residents
JAMA. 2010 Sep 15;304(11):1198-203.

研修医対象のリフレクションが利用可能バイアスに対抗できるかの研究
以前のケースに類似したケースに直面しsystem1を使用するとエラーを起こす傾向にあったが,振り返りを適用すると診断精度が改善した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32935315/
Specific Disease Knowledge as Predictor of Susceptibility to Availability Bias in Diagnostic Reasoning: a Randomized Controlled Experiment
J Gen Intern Med. 2020 Sep 15.

知識がある医師のほうがそうでない医師より利用可能バイアスの影響を受けにくい


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16307548/
Case clustering in infective endocarditis: the role of availability bias
Clin Microbiol Infect. 2005 Dec;11(12):955-7.
availiability biasでIEの診断が増えた(=見逃しが減った?)


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32788532/
Availability Bias Causes Misdiagnoses by Physicians: Direct Evidence from a Randomized Controlled Trial
Intern Med. 2020 Dec 15;59(24):3141-3146
利用可能バイアスが診断ミスを招いた。
振り返りでも修正できなかった


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31988257/
' Immunising' physicians against availability bias in diagnostic reasoning: a randomised controlled experiment
BMJ Qual Saf. 2020 Jul;29(7):550-559.

類似した疾患を識別する臨床所見の知識を高めることを目的とした介入は,模擬症例において利用可能バイアスに対抗でき診断エラーが減少した


 
ということで
 
illness scriptの勉強(特にCluster/類似疾患との鑑別をつめる方法)はエビデンスがあり、利用可能バイアスにそれなりに対抗できる。ただし、患者さんに出会ってからはできない。
振り返りは報告によって結果はことなるが、患者さんに出会ってからも可能。
 
という結論に。冒頭のまとめを読めばいいジャン!!という落ちですみません。。。