ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】ERへの搬送時に応需側(ER側)の引継ぎバンドルで伝達が改善 BMJ Qual Saf. 2021 Mar;30(3):208-215.

Implementing receiver-driven handoffs to the emergency department to reduce miscommunication

BMJ Qual Saf. 2021 Mar;30(3):208-215.

 

クリニック→救急外来での引継ぎに関する研究。応需側の行動変容だけで改善するという観点でも非常に有用性のある研究だと思いました。

背景:ケア移行時の情報伝達ミスは医療過誤の主な原因となっている。近年のコンセンサスに基づくクリニックから救急外来への情報伝達を標準化する方法はこれまで評価がされていなかった。

受け取り方による構造化された引継ぎへの介入が
1.構造化された要素がより含まれるか
2.コミュニケーションミスの減少
3.質,安全性,効率の向上
に繋がるかどうかを調査した

方法:
小児の救急外来と関連クリリニックを対象に2016-2018年に介入研究を行った。標準化したテンプレート,受け取り側の訓練,フィードバックの反復,意識向上をふくめ申し送りのバンドルを開発した。音声記録と医療記録をランダムに評価し,標準化された要素の含有率とミスコミュニケーション率を測定した。申し送りのプロセスの質,安全性,効率に関しての評価をするために介入前と後で関係者を調査した。

 
結果:162の申し送りにおいて,受け取り側主導側介入の実施は重要な要素を含む割合が有意に増加していた
 
重症度 46% vs 77%
タスク完了 64% vs 83%
期待する検査 0% vs 64%
緊急時のプラン 0% vs 54%
コールバックの要求の詳細 7% vs 81%
情報の統合 2% vs 73%
 
ミスコミュニケーションは48%から26%に減少した
関係者への調査では質は改善(35%→59%),安全性も改善(43%→73%),効率も改善した(17%→72%)
 
結論:クリニックから救急外来への申し送りを標準化するための受け取り側主導での介入はコミュニケーションの質の向上と関連していた。このプログラムの実施の拡大により小児救急外来に搬送された患者のケアが大幅に改善される可能性がある。
 
□Fig1より
 
●言葉での申し送り/介入後
・バイタルは安定しているか,安定はしているか臨床的に悪化傾向か(バイタルが不安定であれば記録し,医師をコールする)
・紹介の理由は
・病歴を要約できますか?
・救急外来でどういうケアが必要だと思いますか?(検査や治療など)
・結果待ちの検査はありますか?
・救急外来でのマネージメントの関わるような他の情報はありますか?
・帰宅や方針を決める前に救急外来からのコールバックはいりますか?
・まとめるとこのような感じですか?
 
●文書での申し送り/介入後
コールバックの必要の有無
疾患の重症度
患者の要約:紹介理由,病歴の要約,終わっている検査/治療/コンサルト
アクションリスト:希望の検査など,保留中の検査はあるか
周囲の状況:そのほかに追加の情報はあるか
統合:紹介の理由と必要なケアは明確か
 

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