ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】心不全に対する減塩食、心血管入院や死亡は不変!?(Lancet. 2022;399(10333):1391-1400.)

Lancetにでていた心不全患者に対する減塩食で心血管入院や死亡に有意差なしのRCTを読んでみました

対象群の塩分摂取量とかをみるかぎり日本にこの研究を適応できるかはちょっと悩みどころかなと個人的には感じました

 

 

Reduction of dietary sodium to less than 100 mmol in heart failure (SODIUM-HF): an international, open-label, randomised, controlled trial

Lancet. 2022 Apr 9;399(10333):1391-1400.
 
6つの国,26施設での非盲検無作為対照試験
P:18歳以上,NYHA ⅡとⅢの慢性心不全
E:塩分 100mmol=1.5g/d未満の食事(397例)
C:通常の食事(409例)
O:intention-to-treat(ITT)解析で12ヶ月以内に発生した心血管関連の入院,救急受診,全死亡の複合
 
年齢中央値は67歳,EF 36%,NT-proBNPは801,BNPは197
ナトリウム摂取量は
コントロール群:2119mg/d→2073mg/d
減塩群:2286mg/d→1658mg/d
 
全死亡(減塩6% vs コントロール4% P=0.32)
心血管入院(減塩10% vs コントロール12% P=0.36)
心血管関連救急受診(減塩4% vs コントロール 4% P=0.60)
 
 
高齢者の食思不振や体重減少症例で塩分制限が鑑別に上がった時どうするか...心不全症例だと結構悩みます。
 
Reduced salt intake for heart failure. 
A systematic review. JAMA Intern Med 2018;178(12):1693-1700.
 
Study Design:無作為化比較試験のメタアナリシス
・塩分制限の死亡率への影響を評価するのに充分な規模,あるいは期間の研究はなかった。
・2件の研究(n=107)では、入院中のナトリウム制限は入院期間と再入院期間に影響を与えなかった。
・6件の外来患者さんを対象としたスタディのうち4件では、ナトリウム制限と標準摂取との間に差を認めなかった。もし差があったとしても,スタディが少ない,また小規模のため有意差が出なかった可能性,スタディのデザインが様々だったことが影響した可能性はある。
 
というう文献もあって色々悩ましいところです。
 
今回の研究はコントロール群の塩分摂取量をみるかぎり,ちょっと日本での適応は難しいかもしれません。。あと入院の数>救急の受診の数、ということで救急受診の閾値も日本とは違うのかなと感じました。