ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】低Na血症(JAMA. 2022;328(3):280-291)

Diagnosis and Management of Hyponatremia: A Review
JAMA. 2022;328(3):280-291
 
少し前に当院のJCで話題になった論文
 
転倒はしっていたんですが低Naが思った以上に高齢者医療の敵!?で骨粗鬆症や認知機能や歩行障害との関連までは知らなかったので勉強になりました
 
自分の興味あるところだけPICKUPしてまとめてみました(Selection biasすみません!!)
 
原著はかなりしっかり書いてあるので興味ある人は是非原著読破推奨です
 
 
✓低Na血症はNa135mEq/L未満(125未満が重症,125-129は中等症,130-134は軽症)
✓成人の5%,65歳以上の20%,入院患者の35%,心不全患者の30%,がんや肝硬変の50%
✓低Na血症は高齢者において転倒だけでなく骨粗鬆症,骨折,認知症,歩行障害に関連に関連
✓循環量減少性低ナトリウム血症の診断において身体所見は感度 50~70% および特異度 30~50% と精度が低い。
✓そのため尿浸透圧と尿中ナトリウム濃度を測定が重要。ただし,Na摂取量,関連する疾患(腎臓や心疾患),利尿剤で修飾をうける
✓尿中Na濃度が30mEq/L以上であれば、腎臓からのNaの喪失を示唆し、30mEq/L未満であれば、腎臓以外からのNaの喪失を示唆する。
✓尿浸透圧100 mOsm/kgは尿比重1.003に、300 mOsm/kgは尿比重1.010に、500 mOsm/kgは尿比重1.020に近似。
 
✓追加の検査は、低ナトリウム血症の重症度に基づいてではなく、疑われる基礎疾患に基づいて実施されるべきである。
✓SIADHの診断は正常Volumeの低Na血症,不適切な濃縮尿(尿Osm 100mOsm/Kg,尿比重 1.003以上),高Na尿症(尿Na 30mEq/L以上),甲状腺/副腎/腎機能の障害がない
バソプレシンレベルの測定は、低ナトリウム血症の病因の評価には有用ではない。
✓SIADHの評価でルーチンの画像診断を支持する質の高い証拠はない。低ナトリウム血症の原因を診断するには、病歴、身体診察および初期臨床検査からの情報で通常十分である。ただし 1 つ以上の原因が存在することもある
原発性多飲症による低Na血症の人は52%に精神疾患,15%に過剰水分摂取につながる内科疾患があったが31%は併存疾患がないという報告がある
 
□浸透圧性脱髄症候群関連メモ
・慢性低Na血症の急激な補正により生じる
・12mEq/d以上、稀に10mEq/d以上の補正で生じる
・1-7dと少し遅れて発症する
・そのため、重度低Na血症による意識障害→急速補正で意識が改善→急速補正による弊害で浸透圧性脱髄症候群が発症し神経障害がでる、という二相性の経過をたどる
・浸透圧性脱髄症候群の症状はパーキンソニズム,Lock in,四肢麻痺,意識障害...etc
・浸透圧性脱髄症候群発症のリスクにはNa<110mEq/L,アルコール使用障害,移植後患者,K欠乏,栄養失調など
 
 

アメリカの重症低Na血症のガイドラインの治療

高張食塩水の治療適応
重篤な症状を伴う場合(傾眠,痙攣,心肺障害)
→中等度の症状(嘔吐や混迷)があり生命を脅かす合併症に進行するリスクが高い
Naの補正速度は4-6mEq/Lを1-2時間
3%食塩水の治療レジメンの推奨
→100mlを10分以上かけてボーラスで投与
→目的のNa濃度達成までは3回まで
Naのフォローは最初の24hは4-6h毎
超えてはいけない補正ライン
→最初の24時間で10mEq/L
→最初の48時間で18mEq/L
脱髄リスク高い人は8mEq/24h

□ヨーロッパの重症低Na血症のガイドラインの治療

Naの補正速度は5mEq/Lを1-2時間
3%食塩水の治療レジメンの推奨
→150mlを20分以上かけてボーラスで投与
→目的のNa濃度達成までは2回まで
Naのフォローは最初の24hは6h毎