ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

□ケース流し読み:63歳男性,頭痛,悪寒,筋肉痛

□ケース流し読み:63歳男性,頭痛,悪寒,筋肉痛

63-Year-Old Man With Fever, Chills, and Myalgias(Mayo Clin Proc.2019;94(5):882-886)

※注意:ネタバレ含みますので注意してください,また管理人の判断で情報をかなり抜粋していることを御容赦ください

Septicな症例に圧迫で消退したい圧痛の伴わない皮疹をみたら何を考えるか?という症例です

DM,ACS,HT,OSAS既往がありL4神経根症に対してステロイド注射をしている63才男性
5dの頭痛,悪寒,筋肉痛,1dの経過の39.9℃の発熱や腰痛の増悪でER受診
BT 37.4 HR 75 BP 95/50 RR 17 SpO2 97%
左足に圧痛を伴わない圧迫しても消退しない発疹があった

ということで診断は?という流れから診断と治療の話まで解説が勉強になる内容でした
血液培養でMSSAが陽性、CEZで治療するもインターバルはのびつつあるが血液培養は陽性になり続け,四肢の様々なところに皮膚所見が出現
TTEは陰性だったがTEEでA弁のIEの診断になった
腰椎MRIでは異常なく頭部MRIで小さな脳梗塞あり(神経所見なし)
手術を予定したところARが出現したため緊急手術になったという症例でした

考察で勉強になったポイントは

IEの疫学は根本的な弁の基礎疾患の有病率を反映している
世界的にはリウマチ性心疾患は依然として主なリスク
口腔衛生不良は菌血症のリスク

IEの平均年齢は1980年代は40代だったのが2000年代には70代に移行している
特に先進国では変性の弁疾患,DM,悪性腫瘍,生存した先天性心疾患,心臓内デバイスなどがリスク
とくに植え込みデバイスは5年以内で最大2%で生じる
中心静脈カテーテルもリスク

IEの症状で多いのは発熱(90%),心雑音(85%)
IEにおける皮膚所見は11/9%だが診断のclueになりえる。脳塞栓症のリスクとも関連。

蜂窩織炎であれば圧痛があるはず
症例の皮疹は圧痛もなく圧迫で消退しないので紫斑か血栓症を考える
なのでIEのclueだったという話


TTEは感度40-90%特異度90%
TTEは感度86-90%
人工弁のほうが感度が下がる
臨床的に疑っていてもUSが陰性の場合,7-10d後にTEEを繰り返せばみえることもある

解剖が複雑な場合や心エコー所見が非特異的な場合にPET-CTが有用なこともある(J Nucl Cardiol. 2019 Jun;26(3):922-935)

IE脳梗塞になっても抗凝固の適応にはならない

手術適応は適切な治療をしても制御できない感染,治療抵抗性の心不全,再発性塞栓症など

10-13mm以上の大きな疣贅は死亡率の増加と関連して外科介入の正当性を促進する
神経学的合併症がある患者における外科的介入に関しては色々議論になっている。

※AHAやESCのガイドラインでは「No Delay」の記載。Early vs Delayの天秤は図の通り(Circulation. 2016;134(17):1280-1292.)


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詳しく読みたいかたは

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30935707

を参照ください