ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】高齢者での低エネルギーの外傷における頭蓋内出血出血の頻度,抗血小板や抗凝固薬の関連

【JC】高齢者での低エネルギーの外傷における頭蓋内出血の頻度,抗血小板や抗凝固薬の関連
 
頭蓋内出血の頻度は6.9%,ICU入室は1%,脳外科介入が必要なのは0.6%。多変量解析の結果抗血小板や抗凝固薬は特にリスクと関連していなかった。
 
結果は臨床の実感と非常にマッチしています。症状や神経所見なしの高齢者頭部外傷にどこまでCTを撮像するか、は結構悩ましいです
(つべこべ考えずに取ればいいじゃん、って人もいるとは思うのですがじゃあどの状況でもすべからくER受診して頭部CTするべきかっていうと...)
 
このへんの研究や臨床的なガイドラインがどんどんすすむといいなぁと思っています
 
Prevalence and Severity of Traumatic Intracranial Hemorrhage in Older Adults with Low‐Energy Falls
J Am Geriatr Soc. 2020 May;68(5):977-982
 
背景/目的:低エネルギーの転倒を呈した高齢者の大規模コホート研究における外傷性頭蓋内出血(tICH)の有病率,重症度,抗凝固薬と抗血小板薬との関連を明らかにすること
参加者:1年間で低エネルギーの転倒でERを受診し48時間以内にCTを撮像されたもの
測定:tICHsの有病率と重症度を評価し、転帰(院内死亡率、集中治療室(ICU)への入院、または脳外科的介入)を特定した。抗凝固療法/抗血小板療法とtICHのリスクとの関連を測定するために多変量回帰モデルを使用し、既知の予測因子を調整した。
結果:tICHは6.9%(176/2567)。tICHがあった176例のうち15例(8.5%)で脳神経外科的な介入が行われ,28例(15.9%)がICU入院,14例(8.0%)で院内で死亡した。CTで検出された頭蓋骨骨折や鎖骨より上の受傷(?)がtICHの強い予測因子だった(OR 4.28,OR 1.88)。2567人のうち1424人(55%)が抗凝固や抗血小板薬を内服していた。多変量回帰モデルでは、tICHのリスクで有意差なかった。
結論:抗凝固薬または抗血小板薬の投薬は、cCT検査を受けた低エネルギー転倒の高齢患者におけるtICHの有病率および重症度の増加とは関連していなかった。cCTで検出された頭蓋骨骨折に加えて、鎖骨上の目に見える損傷がtICHの最も強い臨床的予測因子であった。これらの知見はプロスペクティブな検証に値するものである。