ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】アルコール離脱予防の病棟管理に関して(J Hosp Med. 2022 Jan;17(1):47-49.)

Clinical Guideline Highlights for the Hospitalist: 2020 American Society of Addiction
Medicine Clinical Practice Guideline on Alcohol Withdrawal Management

J Hosp Med. 2022 Jan;17(1):47-49.
 
ASAM/アメリカ依存症医学会によるアルコール離脱のガイドラインの内容を、JHMのほうで病棟管理における推奨をまとめて載せていた号があったので読んでみました
 
 
元のガイドラインはこちら
 
ダイジェスト版はこちら
 
どちらも頑張って一読はしました。。色々しっかり書いてあって良い内容だったんですが...結構重複が多いのも欠点でした。
 
病棟管理に関して学ぶだけであればまずはこれを読むが良い気がします
(個人的にはWernickeの初期治療は500mg×3回でよいのではとも思いました)
 
AWS:アルコール離脱症候群
AUD:アルコール使用障害
 
✓診断
 
・最近あるいは定期的にアルコールを使用しているすべての入院患者は、示唆的な症状の有無にかかわらず、AWSのリスク評価を受けるべきである
・AUDIT-PCはAWSのリスクのある患者を識別し,アルコール離脱重症度予測尺度/PAWSSは痙攣やアルコール離脱せん妄を含む重症またはComplicated AWSのリスクのある患者を識別する
・CIWA-ArはAWSの診断の患者の治療への反応をモニターするために開発されている。診断のためではない。
 
✓軽症〜中等症の治療
 
・痙攣およびアルコール離脱せん妄の発生率を減少させるという実績があるため、ベンゾジアゼピン(BZO)は引き続き第一選択薬として推奨される
・CIWA-ArによるSymptom-triggerのBZO投与はBZOの累積投与量の減少や入院期間短縮が示されておりFixed/固定量投与より推奨される。
・軽症のAWSの患者で重度の離脱のリスクが低い患者は最大36時間監視する
・CIWA-Arスコアが高い/重度、あるいは合併症が高い患者はAWS治療の初期に中~高用量の長時間作用型BZOを頻繁に投与し(Front Loading)、症状を速やかにコントロールし、悪化を防ぐことが推奨される。
・BZOが禁忌の場合、カルバマゼピンまたはガバペンチンが軽度または中等度のAWSに使用されることがある。しかし、痙攣および離脱せん妄の明確な減少が確立されていないため、どちらの薬剤も第一選択薬として推奨されない
・α2アゴニスト(例、クロニジン、デクスメデトミジン)は、BZO単独では十分に制御できない持続的な自律神経過敏または不安の治療に使用することができる
 
 
✓重症の治療
 
・重症のAWSは重度の症状や徴候,Complicated AWSは痙攣やせん妄をきたした症例。
・痙攣の患者には即効性のあるBZOを投与する(ジアゼパムのIVなど)
・離脱せん妄のある患者には、軽い鎮静が得られる量のベンゾジアゼピンを投与する(できればIVで)
・BZOの大量投与が必要となる可能性に備え、過鎮静と呼吸抑制について患者をモニタする必要がある。
抗精神病薬は、離脱せん妄または幻覚症状などの他の症状がBZO単独では十分にコントロールできない場合に補助的に使用することができるが、単独療法として使用すべきではない
・ASAMのガイドラインでは、α-2作動薬は離脱せん妄の治療に使用すべきではないと強調しているが、ICUにおける抵抗性アルコール離脱の補助薬として使用することは可能である
フェノバルビタールは、重度の離脱症状に対するBZOの代替薬として許容される。しかし、ASAMのガイドラインでは、経験豊富な臨床医はによって使用されるべき勧告している
 
✓ウェルニッケ脳症の治療
 
・ウェルニッケ脳症を予防するためにチアミンを投与すべきである。栄養不良の患者、重篤な/離脱症状のある患者、ICUレベルのケアを必要とする患者には非経口製剤の投与が推奨される。
・特にAWSのためにICUに入院したすべての患者には、WEの診断が困難な場合が多いので、チアミンを投与すべきである。
・WEの治療に必要なチアミンの投与量に関するコンセンサスはないが、1日100mgを3~5日間静脈内投与または筋肉内投与する
・有害性の証拠がないため、チアミンブドウ糖またはブドウ糖の前、後、または同時に投与されることがある。
・ASAMのガイドラインでは、WE患者のリスク層別化の方法について具体的な推奨はしていない。
 
✓アルコール使用障害の治療
 
AWSの入院は、薬物療法や外来患者との連携を含むAUDの治療に患者を巻き込む重要な機会である。
・本ガイドラインではAUDの治療は可能な限りAWSの管理と同時に開始されるべきであることを強調しているが、特定の薬物療法に関する推奨はしていない。