ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】起立試験は座位からではなく仰臥位から(J Am Geriatr Soc. 2022 Aug;70(8):2310-2319.)

Comparison of supine and seated orthostatic hypotension assessments and their association with falls and orthostatic symptoms
J Am Geriatr Soc. 2022 Aug;70(8):2310-2319.

起立性低血圧の検出には起立試験、となるわけですが

仰臥位→立位、とやる仰臥位プロトコル
座位→立位、とやる座位プロトコル
となる2つの方法があるようです。高齢者の転倒リスク群においてそれを検証したJAGSの研究です。
 
 
・起立性低血圧に関するガイドラインは仰臥位→立位、座位→立位、どちらも推奨するものがあり一定していない
・近年でたメタアナリシスでは座位プロトコルが使用されていた(Ann Intern Med. 2021;174:58-68)
・STURDY試験(VitDと転倒の関連を調べた研究)の付随で座位プロトコルと仰臥位のプロトコルが行われていた

本研究の目的は、STURDY試験のDataを使用して座位プロトコル vs 仰臥位プロトコルで以下を比較するために本研究が行われた

1.OHの検出率
2.転倒事故との関連性。
3.起立性症状との関連性。

□Result
 

534名(平均年齢76±5歳,女性42%)が仰臥位と座位の評価を行い,ベースラインの平均血圧は130±19/68±11mmHg,62%が高血圧または高血圧の既往があった。
 
座位プロトコルで2.1%,立位プロトコルで15.0%,OHの検出があった
 
座位プロトコルのOHは転倒リスクと関連しなかった
仰臥位プロトコルのOHは転倒リスクと関連しなかった
仰臥位プロトコル収縮期血圧のOHは転倒リスクと関連した(HR 1.77;95%CI 1.02-3.05)
 
座位プロトコルのOHはあらゆる症状と関連がなかった(P>0.40)
仰臥位プロトコルのOHは自己申告の意識消失,ブラックアウトなどの症状と関連がなかった(P<0.03)
 
□Conclusion
 
仰臥位プロトコルの起立性低血圧のほうが頻度が高く、起立性症状と関連し、転倒の予測因子なる可能性が高い
 

□KeyPoint
 
・転倒リスクのある高齢者において仰臥位プロトコルと座位プロトコルの起立試験は互換性がない
・座位プロトコルより仰臥位プロトコルのほうが起立性低血圧の検出率が高く、より転倒と関連している
 
 
内容には納得、というかそもそも起立試験を座位プロトコルでやる、という発想がこれまでありませんでした。(立位保持が難しい人に仰臥位→座位、とすることはありましたが...)
 
次に思ったのが...これはもしかして...AIMのシステマティックレビュー(Ann Intern Med. 2021;174(1):58-68)ふくめ、文献を吟味するときは、仰臥位プロトコルか座位プロトコルか確認をしなくてはいけない...ということなのか!?