【JC 流し読み】高齢者の薬剤に関してのupdate@2017
JAGSで紹介された2017年の薬剤に関する論文に関しての抜粋です(2018年と2019年版が続きます)
1.3種類以上の中枢神経に作用する薬剤(抗うつ薬,抗精神病薬,BZO,Z-drug,オピオイド受容体作動薬)が同時に処方された人の割合は増加傾向,特に痛みがある人でおきやすい(JAMA Intern Med. 2017 Apr 1;177(4):583-585)
2.高齢者の抗てんかん薬のアドヒアランスは悪いかも(Epilepsy Behav. 2017 Jan;66:68-73.)
3.長期療養施設では抗菌薬の使用量は多く,治療期間やUTI関連に焦点をあてるのがよさそう(J Am Med Dir Assoc. 2017 Dec 1;18(12):1098.e1-1098.e11.)
4.高齢者の入院の1割は薬剤の有害事象によるものでほとんどが予防可能,特にNSAIDsとβ-blocker(Eur J Clin Pharmacol. 2017 Jun;73(6):759-770.9
Update on Medication Use Quality and Safety in Older Adults, 2017
J Am Geriatr Soc. 2018 Dec;66(12):2254-2258
①Trends in Central Nervous System-Active Polypharmacy Among Older Adults Seen in Outpatient Care in the United States
JAMA Intern Med. 2017 Apr 1;177(4):583-585
3種類以上の中枢神経に作用する薬剤(抗うつ薬,抗精神病薬,BZO,Z-drug,オピオイド受容体作動薬)が処方された人の割合を調べたところ2004年-2006年と比較して2011年-2013年の間に0.6%から1.4%に増加した。農村部在住と痛みがある人で起きやすい傾向にあった。
②Adherence to antiepileptic drugs among diverse older Americans on Part D Medicare
Epilepsy Behav. 2017 Jan;66:68-73.
高齢者のてんかん患者の1/3は抗てんかん薬のアドヒアランスがわるい
費用負担や貧困の影響に注意して調査する必要がある
③Utilization of Antibiotics in Long-Term Care Facilities in British Columbia, Canada
J Am Med Dir Assoc. 2017 Dec 1;18(12):1098.e1-1098.e11.
長期療養施設における抗菌薬の使用は一般と比較して多い
長期療養施設における抗菌薬適正使用は治療期間,UTIの適切な検出,尿路感染症予防につかわれる抗菌薬に焦点を当てるべきである
④Hospital admissions due to adverse drug reactions in the elderly. A meta-analysis
Eur J Clin Pharmacol. 2017 Jun;73(6):759-770.
【JC 流し読み】ACNES 1116例の後ろ向き研究(Ann Surg. 2021 Feb 1;273(2):373-378)
Snap diagnosisの代表例であるACNES(前皮神経絞扼症候群)の1116例の後ろ向き研究の報告です
慢性腹痛ではACNESふくめ筋骨格疾患は必ず鑑別にあげる,そしてなによりも病歴と診察(特にCarnett)をしっかりするのがなによりも大事だとおもっています
Characteristics of 1116 Consecutive Patients Diagnosed With Anterior Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome (ACNES)
Ann Surg. 2021 Feb 1;273(2):373-378
【JC 流し読み】外傷後の鎮痛はアセトアミノフェン?NSAIDs?併用?(Acad Emerg Med. 2021 Feb;28(2):155-163)
外傷後の鎮痛はアセトアミノフェン?NSAIDs?併用?
文献によって色々結果がことなるところではありますが...
今回は併用=アセトアミノフェン>NSAIDsの報告
Acetaminophen, Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs, or Combination of Both Analgesics in Acute Posttrauma Pain: A Randomized Controlled Trial
Acad Emerg Med. 2021 Feb;28(2):155-163
目的:NSAIDsとアセトアミノフェンは救急外来で外傷後の痛みを緩和するために頻用される薬である。両者の併用に関しては未だ議論の余地がある。我々は救急外来を帰宅する患者を対象に外傷後の疼痛の治療に両者併用,NSAIDs単剤,アセトアミノフェン単剤を比較した。
方法:2017年3月から2018年11月まで単一の救急外来で実施された前向きRCT。対象患者はアセトアミノフェン単独,高用量NSAIDs(ピロキシカム),両者併用の3群に無作為にわけられ7日間投与された。腫瘍アウトカムは追加の経口鎮痛薬の必要性だった。副次転機として帰宅から7日目までの痛みの変化,残存疼痛,副作用,患者満足度。
【JC】ERへの搬送時に応需側(ER側)の引継ぎバンドルで伝達が改善 BMJ Qual Saf. 2021 Mar;30(3):208-215.
Implementing receiver-driven handoffs to the emergency department to reduce miscommunication
BMJ Qual Saf. 2021 Mar;30(3):208-215.
クリニック→救急外来での引継ぎに関する研究。応需側の行動変容だけで改善するという観点でも非常に有用性のある研究だと思いました。
背景:ケア移行時の情報伝達ミスは医療過誤の主な原因となっている。近年のコンセンサスに基づくクリニックから救急外来への情報伝達を標準化する方法はこれまで評価がされていなかった。
受け取り方による構造化された引継ぎへの介入が
1.構造化された要素がより含まれるか
2.コミュニケーションミスの減少
3.質,安全性,効率の向上
に繋がるかどうかを調査した
方法:
小児の救急外来と関連クリリニックを対象に2016-2018年に介入研究を行った。標準化したテンプレート,受け取り側の訓練,フィードバックの反復,意識向上をふくめ申し送りのバンドルを開発した。音声記録と医療記録をランダムに評価し,標準化された要素の含有率とミスコミュニケーション率を測定した。申し送りのプロセスの質,安全性,効率に関しての評価をするために介入前と後で関係者を調査した。
【JC 流し読み】救急外来帰宅後はフォローアップの設定で死亡率が低下(JAMA Netw Open. 2020 Oct 1;3(10):e2019878)
診断関連でLectureさせていただく機会をもらいました
東京北医療センター 総合診療科の岡田先生に声をかけていただき「まったく疾患が思いつかないときの診断推論」をテーマにお話しさせていただく機会をもらいました
このような機会をいただき本当にありがとうございました
(そしてアドバイスいただいた綿貫先生,原田侑典先生ありがとうございました!!)
東京北医療センター 総合診療科の学びに関しては是非こちらを参照ください!!
http://bit.do/fN558
【JC 流し読み】鑑別診断ツールはプライマリケアで使われる可能性が低い Diagnosis (Berl). 2020 Feb 14;8(1):91-99.
Assessing the utility of a differential diagnostic generator in UK general practice: a feasibility study
Diagnosis (Berl). 2020 Feb 14;8(1):91-99.
□背景①
・診断の意思決定を支援する鑑別診断ツールの有用性を支持するエビデンスが増えているが,主に米国の二次医療機関に限られて使われている
・プライマリケア領域ではその多忙さから医師の時間に制約があるといわれ,その代替手段の一つとして鑑別診断ツールが注目されている
・しかし,一方でプライマリケア領域では25-50%は疾患特異的な診断ができないことが言われており,二次医療機関とは様相が異なる
□背景②/Isabelに関して
・Isabelは他のツールと比較しても有用性が示されている
・役に立つというユーザーの報告もある
・逆に9割のユーザーが不便と感じているという報告もある
・イギリスの利用に関する研究は1つしかなく,使用頻度も低く成果も限られていた
□Table1よりIsabelの特徴
・独立ないし電子カルテと統合して使えるWebベースの診断チェックリストツール
・患者の年齢,性別,臨床像,渡航歴を入力する
・診断結果は2秒以内に見逃していけない疾患ふくめ10件提示され,ワンクリックで詳細が表示される
・地域に合わせてカスタマイズできる
・自然言語処理ソフトを搭載している
※Isabel vs 志水太郎先生の記事も是非
日経メディカルの記事
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/dxbias/201909/562114.html
IJERPHにLetterで掲載になりました
https://generalistcwtg.hatenablog.com/entry/2020/08/22/183714
https://www.mdpi.com/1660-4601/17/17/6110
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32842581/
●結果と結論
・利用がそもそもかなり限られていた
・ほとんどの人は使用しておらず,使用した人の中でも使用は限られており,患者管理を変えることはなかった
・事前インタビューでは両価的な見方が示された
・使用後のインタビューでは内因性,外因性,様々な要因による使用率の低さを示唆した。
→内因的要素:DDxツールの存在を知らない,患者と臨床医の関係への影響に関する懸念,DDxツールをいつ使うかの不確実性や変動性
→外因性要素:電子カルテへの統合の欠如,時間
・現状では鑑別診断ツールとしてのIsabelは英国のプライマリケア診察で使われる可能性が低い。これには内因性,外因性,両方の要因が絡んでいる