ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

ping-pong gazeとroving eye movement

ping-pong gazeとroving eye movement

 

ネタばかりたまって公開が追いつかない状況ですが、まずフィジカルに関して。少し前の救急外来でroving eye movementをみたので深めてみようと思って調べてみました

Google先生に聞くと長野先生のブログはじめ色々HITします
http://nagano1123.livedoor.blog/archives/17340706.html
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=5179

基本的にping-pong gaze ≒ roving eye movementと解釈して話を進めます
ping-pong gaze は3-7秒程度で振り子のように左右に眼位が移動する眼球運動で1976年にSelenickが報告しています(Neurology 1993;43:1067-70.)

JAMAやNEJMがyoutubeにあげている動画でみると

https://www.youtube.com/watch?v=yv2Lu-fjhJE
https://www.youtube.com/watch?v=3q-bWRVDDCs

このような感じです。なお
ping-pong gaze」PubmedでHIT 28 Google検索だと1020万
「roving eye movement」をPubmedでHIT 30 Googleで122万
なのでping-pong gazeのほうが知名度は高いようです

□Roving eye movementに関して

日本の施設からも報告がいくつか

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25984318
Clin Case Rep. 2015 May;3(5):335-6.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21372476
Intern Med. 2011;50(5):529-30.

この Roving eye movement 通常の睡眠でもでることはあるようですが,鑑別は両側大脳半球の障害,中毒,代謝性疾患になります(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2001;71(suppl I):i13–i17)
両側の視床障害での報告(J Neurol. 1979 Aug;221(2):105-12.)や,低酸素脳症の時にroving eye movementがあると予後が良いという報告(JAMA. 1985 Mar 8;253(10):1420-6.)などもあるようです。

ping-pong gaze

動画にあるように基本的にはなめやかな動きで,3-7秒のサイクルで左右に動くのが典型的なパターン。報告によってはsaccadic(衝動的)になることもあります(J Neuroophthalmol 1998;18:43-6.)
主な鑑別は(Neurocrit Care. 2018 Oct;29(2):315-316)
・両側の大脳基底核や半球病変
・中脳病変,小脳虫部病変
てんかん
代謝性疾患(CO中毒,肝性脳症,セロトニン症候群)
・MAO阻害薬過量内服

その他,片側性脳梗塞(Neurol India. 2016 May-Jun;64(3):569-70)や細菌性髄膜炎(Neurology. 2017 Nov 7;89(19):2021)でも報告はあるようです。

□臨床への応用

意識障害の人の診察はABCと血糖の確認をまず行うと思います
ABCをクリアしたらDの評価で瞳孔の評価に進む時に ping-pong gaze ないし roving eye movement があった場合...

・眼球頭反射の確認(人形の目現象)
片麻痺のチェック
・Babinski反射

の情報の組み合わせで意識障害の原因がある程度絞れる、となります
次回はOcular dippingとOcular bobbingを予定しています