ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】ピロリ除菌に関するシステマティックレビューとメタアナリシス(Gut 2020 Mar 23)

Helicobacter pylori Eradication Therapy to Prevent Gastric Cancer: Systematic Review and Meta-Analysis
Gut. 2020 Mar 23;gutjnl-2020-320839

Object:胃癌はH.ピロリと強く関連している。以前の系統的レビューとメタアナリシスでは根絶療法により胃癌の将来の発生率が低下することを示唆しましたが、効果の大きさは不明であり、胃癌関連死亡率の低下はなかった。多くのデータが蓄積されたため再度メタアナリシスを行った。内視鏡的粘膜切除術を受けた患者の胃癌の将来のリスクに対する除菌療法の影響も評価しました。
Design:2020年2月までに医学文献を検索しピロリ菌陽性の健常者とピロリ菌陽性で胃腫瘍に対して内視鏡的な切除術をうけた人を対象としたその後の胃癌発生に関してのRCTを特定した。対象群は無治療ないしプラセボ投与。フォローアップ期間は2年間,RRとNNTと障害調整生存年数(disability-adjusted life-years)を評価した
RESULTS: 7つの8283人の健常者,3つの1841人の胃腫瘍を対象にしたRCTが特定された。健常者の場合は胃癌が減少(RR 0.54,NNT=72),胃癌による死亡率の低下(RR 0.61,NNT=135),全死亡には影響しなかった。もし世界的にスクリーニングと治療が行われた場合は8743815DALYsが得られる。胃腫瘍の患者でも根絶治療により将来の胃癌は減少した(RR 0.49,NNT=21)。有害事象の報告は不完全だった。
結論:ピロリ除菌が東アジア国の健常者および胃腫瘍患者の胃癌の発生を低下させることに中程度のエビデンスがあった。胃癌に関連する死亡率の低下もみられた


という結果でした


とはいえリスクのない治療もないというわけで...TGIMでみた除菌療法をきっかけに発症したCDIの症例はいろいろ考えるものがありましたので,要はバランスということになるのでしょうか