ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC 流し読み】病歴聴取の中断に関して①(J Gen Intern Med. 2019 Jan; 34(1): 36–40.)

病歴聴取の中断に関して(J Gen Intern Med. 2019 Jan; 34(1): 36–40.)

 

すごく有名な18sでの中断研究*1,その後...というJGIMからの研究でした。研究自体は意思決定共有ツールを導入しても患者の懸念事項の聴取の割合は改善しなかったという結果。ほかに中断までの時間は11sだったという内容やプライマリケア医のほうが懸念事項の聴取ができていた(49% vs 20%)という結果も。

研究内容だけでなくIntroやDiscussionも読むだけで勉強になりました。同号のEditorialは次のネタに

 

 

Eliciting the Patient’s Agenda- Secondary Analysis of Recorded Clinical Encounters
J Gen Intern Med. 2019 Jan; 34(1): 36–40.

背景:患者の懸念事項を聞き出し,注意深く聴取することは患者中心のケアにつながる。しかし臨床医はしばしば患者から聞き出せなかったり,聞き出しても中断してしまう
目的:異なる臨床設定において臨床医は患者の懸念事項をどれくらい聴取しているか,意思決定共有ツールが影響を与えるかを調べた
デザイン,参加者:
測定:無作為に抽出された112の症例の二次分析を行った
測定:2人のレビューワーが独立して,患者の懸念事項の引き出しの完遂や中断までの時間を明らかにし,意思決定共有ツールの使用に応じた議題の引き出しに関して分析を行った
結果:臨床医が懸念事項を聴取できたのは36%(40/112)だった。プライマリケア医は49%,専門医は20%だった。意思決定共有ツールの使用は懸念事項の聴取に影響を与えなかった。懸念事項を聴取できた症例(40例)のうち67%(27例)で中断が発生して,中央値は11秒だった。中断されなかった患者は約6秒で懸念事項を述べた。
結論:臨床医が患者の懸念事項を引き出すことはあまりなく,中断までの時間も以前より早かった。プライマリケア医のほうが懸念事項を引き出す確率が高かった。懸念事項の聴取ができないと臨床医は臨床現場での優先順位を患者さんにとって重要な側面に向ける可能性が低くなる

●Introなどから抜粋

病歴聴取には
・患者と臨床医の関係構築になる
・癒しの意味合いもあり,患者へのニーズへの対応にもなる

患者の懸念事項を引き出し理解することのメリット
・コミュニケーションの効率をよくする(Arch Intern Med. 2008;168:1387–95)
・建設的な協力関係が構築される
・患者中心のケアにつながります
・医師の説明への理解度向上( J Gen Intern Med. 2005;20:267–70.)

中断に関して
・69%の症例で平均18sで中断(Ann Intern Med. 1984;101:692–6. )
・平均23s(JAMA. 1999;281:283–7)
・平均16.5s( J Gen Intern Med. 2005;20:267–70.)

懸念事項の聴取に関して
・23%(Ann Intern Med. 1984;101:692–6. )
・75%(JAMA. 1999;281:283–7)
・60%(J Gen Intern Med. 2005;20:267–70)

●Discussionより抜粋

ほとんどの患者は92sで自発的な話が終了する(BMJ. 2002;325:682–3.BMJ. 2004;328:501–2.)

中断による効果(議題を明確にしたり,集中することができる)やメリットの話もある(JAMA. 2017 Mar 14;317(10):1021-1022.)が,これに対して中断の有用性はかなり低いという反論もある(JAMA. 2017;318:93–4.)

今回の研究でSDMツールが効果を発揮できなかったのはタイミングが関連しているのかもしれない
懸念事項を引き出すのは診療初期で行いSDMは診療終盤で行うため

*1:Ann Intern Med. 1984;101:692–6.