ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】高齢者の孤独感は健康寿命や活動的寿命と関連(J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3092-3102)

最近JAGSでLonelinessに関する文献が多い気がします
孤独は約3年ほど健康寿命を短くするという、孤独が健康寿命にに与える影響を評価した研究がでていました😊

 

Loneliness and health expectancy among older adults: A longitudinal population-based study
J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3092-3102

Key Points
・孤独が健康寿命に与える影響を定量的に示した初めての研究
健康寿命は自己評価による健康状態と日常生活動作の状態を用いて定義した。
・孤独な高齢者は孤独でない高齢者に比べて寿命が短く、健康寿命または活動寿命が短かった。

Why Does this Paper Matter?

孤独がもたらす健康への影響と、高齢者の孤独を認識し管理することの重要性を明らかにした


□内容

孤独は「身体的・精神的健康の低下」の原因となる
孤独は、高齢者の不健康な自己評価の主な原因となっている
孤独な高齢者はADLやIADLの制限など、機能低下の頻度が高い
孤独は、社会的関与や生活の質の低下、抑うつ症状、冠動脈性心疾患や脳卒中、死亡のリスク要因となる
高齢者においては80歳以上から顕著

ということがわかっているが...孤独が健康寿命に与える影響ということはこれまで評価されていなかった

という背景からの


自己評価健康を用いて健康寿命と不健康寿命(Stat J IAOS. 2014;30(3):209-223)
ADL/iADLの制限の有無で活動的余命と非活動的余命(Stat J IAOS. 2014;30(3):209-223)

を測定するシンガポールでの研究


高齢化が急速に進み,高齢者の割合は2017年20%→2050年40%と予想されている
中国人が大半を占め,集団主義的な文化がある(そして集団主義的な文化のほうが孤独感のレベルが高いといわれている)

60歳以上の高齢者に対して孤独感が総余命,健康余命に与える影響を定量化した

デザイン:全国代表的な縦断調査の多州間生命表分析。
設定:シンガポール
参加者:2009年,2011-12年,2015年にインタビューをうけた3449人
測定:は自己評価健康を用いて健康寿命,ADL/IADLを用いて活動的余命を判断した

結果:60歳,70歳,80歳の時点でほとんど孤独ないし時々孤独になる人はそうではない人と比べて総余命,健康寿命,活動的余命が短かかった(不健康寿命,非活動的余命は同程度だった)
※80歳だと健康寿命と活動的余命の差は両方とも3.1年
結論:孤独の認識と管理は高齢者の健康な自己評価健康とADL/IADLの制限のない生活年数を増加させる可能性がある。