ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】BP製剤と非定形大腿骨骨折のリスクに関しての論文(N Engl J Med. 2020 Aug 20;383(8):743-753)

Medication use quality and safety in older adults: 2020 update
J Am Geriatr Soc. 2022 Feb;70(2):389-397.

より紹介論文②

BP製剤と非定形大腿骨骨折のリスクに関しての論文(N Engl J Med. 2020 Aug 20;383(8):743-753)

 


Atypical femur fracture risk versus fragility fracture prevention with bisphosphonates (domain: medication safety)
N Engl J Med. 2020 Aug 20;383(8):743-753

対象は50歳以上で2007年1月1日から2017年11月30日までに、骨粗鬆症のためにビスフォスフォネートの処方を1回以上受けた女性

主要アウトカムは非定型大腿骨骨折

危険因子情報は年齢,人種,グルココルチコイドの使用,身長,体重,喫煙などの情報を記録から得た
ビスフォスフォネートの使用期間は薬局の記録から判断した

者らはリスクベネフィット分析を行い、ビスフォスフォネート関連の非定型大腿骨骨折が1~10年間発生した場合と比較して、予防された骨粗鬆症および股関節骨折の数を推定した

合計196,129人の女性(59.5%が65歳以上)が対象基準を満たし,このうち277人の非定型大腿骨 骨折が発生しました(1.74/10,000人年)

多変量での調整後,以下のリスクが非定形大腿骨骨折のリスクと関連していた
3-5年のBP製剤使用 HR 8.86
5-8年のBP製剤使用 HR 19.88
8年以上のBP製剤使用 HR 43.51
アジア人 HR 4.84
低身長 5cmあたりHR 1.28
高体重 5kgあたりHR 1.15
1年以上のステロイド使用 HR 2.28

1-10年のBP製剤の使用は大きなメリット(骨粗鬆症や股関節の予防)と関連していた。アジア人女性ではメリットが少なかった。
BP製剤の中止は3ヶ月以上であれば期間に関わらずリスク低下に関連していた

この研究のLimitationとして以下の点などが挙げられている
アレンドロン酸以外の薬に一般化できない
黒人女性での症例が少なすぎて解析できなかった
人種差があり他の国で一般化できない可能性がある

Interpretation and implications

・BP製剤に寄る非定形大腿骨骨折はBP製剤の治療の長さ,アジア人,低慎重,高体重,1年以上のステロイド使用と関連していることが示された(リスク計算が今後可能になる可能性がある)
・加齢によるリスク上昇がみられなかったのは注目できる点
・BP製剤の中止がリスク低下と関連することを示す唯一の観察データー
・BP製剤の中止によるリスクベネフィットのバランス評価の研究が今後必要である
・この研究ではBP製剤による非定形大腿骨骨折のリスクはBP製剤により予防できる骨粗鬆症や股関節骨折と比較して非常に低いことが判明した
・リスクベネフィットは白人女性でよくアジア人女性では得られにくい
・今後はBP製剤のDrug holidayの最適期間や骨粗鬆症治療薬の使用順序に焦点を当てた研究が必要