ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修 修了!!

アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修、修了証をいただきました😊

 

4月に異動してから、病棟管理や外来管理で層が一部違うというのを実感しました。。あきらかにAUDITの使用回数が増えました。。。

Wernickeだけでなく、ペラグラも遭遇する機会がありました。

 

幸いチームに非常に心強い練度の高いスタッフがいる!!のもあり、自分も頑張ろうと再勉強がてら勉強してみました。

 

「何を勉強すればよいか」がふくめ配布資料がわかりやすく、これで受講料8000円は安いなと思いました(なお、うちの場合は病院から経費をだしてもらえるそうです)。付近の施設の情報もE-learningの中で提示があるので色々込みで勉強になりました😊

 

アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修

 

日本アルコール・アディクション医学会

学会のHPからもLinkがあります

興味ある方は是非御参照いただければ幸いです😊

院内の発熱時に関する指示簿の後ろ向き観察研究がPubmedに掲載されました

院内発熱時の指示簿の内容(Dr.callになっているかどうか)で、結果的に菌血症だった症例では、

 

発熱から1時間以内の血液培養採取率が違う(23% vs 67%)

血液培養採取までの時間が違う(1h vs 6.5h)

 

という単施設後ろ向き研究をPubmedに掲載いただきました😊


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35811777/

 
Relationship Between the Use of Preprinted Physician Orders for Hospital-Acquired Fever and Time to Blood Culture Collection: A Single-Center Retrospective Cross-Sectional Study
Int J Gen Med. 2022 Jul 2;15:5929-5935.
 
院内発症の菌血症の症例を後ろ向きにみた研究なので色々限界はあります
Inclusionが「結果的に菌血症だった症例」なので、非菌血症症例は含まれていません
呼吸数データーがなかったので...そのへんの関連も調査できていないです
 
そもそも院内の発熱に対する知見自体があまりないのもありますし、指示簿の内容で血液培養採取までの時間が違うなんて当たり前じゃん、1時間という区切りはどうなんだ、考えもあるかと思いますが...色々こみで面白い結果かなと思っています
 
御指導いただいた小坂先生,弘重先生,和足先生ありがとうございました😊!!
 
 
★入院患者の発熱に興味あるかたは是非こちらの記事も御参照いただければ幸いです
 
 
 

【JC】心不全に対する減塩食、心血管入院や死亡は不変!?(Lancet. 2022;399(10333):1391-1400.)

Lancetにでていた心不全患者に対する減塩食で心血管入院や死亡に有意差なしのRCTを読んでみました

対象群の塩分摂取量とかをみるかぎり日本にこの研究を適応できるかはちょっと悩みどころかなと個人的には感じました

 

 

Reduction of dietary sodium to less than 100 mmol in heart failure (SODIUM-HF): an international, open-label, randomised, controlled trial

Lancet. 2022 Apr 9;399(10333):1391-1400.
 
6つの国,26施設での非盲検無作為対照試験
P:18歳以上,NYHA ⅡとⅢの慢性心不全
E:塩分 100mmol=1.5g/d未満の食事(397例)
C:通常の食事(409例)
O:intention-to-treat(ITT)解析で12ヶ月以内に発生した心血管関連の入院,救急受診,全死亡の複合
 
年齢中央値は67歳,EF 36%,NT-proBNPは801,BNPは197
ナトリウム摂取量は
コントロール群:2119mg/d→2073mg/d
減塩群:2286mg/d→1658mg/d
 
全死亡(減塩6% vs コントロール4% P=0.32)
心血管入院(減塩10% vs コントロール12% P=0.36)
心血管関連救急受診(減塩4% vs コントロール 4% P=0.60)
 
 
高齢者の食思不振や体重減少症例で塩分制限が鑑別に上がった時どうするか...心不全症例だと結構悩みます。
 
Reduced salt intake for heart failure. 
A systematic review. JAMA Intern Med 2018;178(12):1693-1700.
 
Study Design:無作為化比較試験のメタアナリシス
・塩分制限の死亡率への影響を評価するのに充分な規模,あるいは期間の研究はなかった。
・2件の研究(n=107)では、入院中のナトリウム制限は入院期間と再入院期間に影響を与えなかった。
・6件の外来患者さんを対象としたスタディのうち4件では、ナトリウム制限と標準摂取との間に差を認めなかった。もし差があったとしても,スタディが少ない,また小規模のため有意差が出なかった可能性,スタディのデザインが様々だったことが影響した可能性はある。
 
というう文献もあって色々悩ましいところです。
 
今回の研究はコントロール群の塩分摂取量をみるかぎり,ちょっと日本での適応は難しいかもしれません。。あと入院の数>救急の受診の数、ということで救急受診の閾値も日本とは違うのかなと感じました。

【JC】虚弱/Frailtyの慢性心不全の人に対するSGLT-2(Ann Intern Med. 2022;175(6):820-830)

Frailty/虚弱の慢性心不全の人においてもSGLT-2の有用性をしめした研究

個人的には胸熱研究で、Frailty index、の観点も含め読み直して見ました😊

 

Efficacy and Safety of Dapagliflozin According to Frailty in Heart Failure With Reduced Ejection Fraction : A Post Hoc Analysis of the DAPA-HF Trial

Ann Intern Med. 2022;175(6):820-830
 
□概要
 
慢性心不全患者を対象に行われたダパグリフロジン10mg vs プラセボのRCTお解析
主要評価項目は心不全の増悪と心血管死亡
解析できた4742人のうち,FI class 1(脆弱だが虚弱ではない)が2392人(50.2%),FI class 2が1606人(33.9%), FI class 3が744人(15.7%)
フォローアップの中央値は18.2月
FIのクラスにかかわらず心不全の増悪や心血管死亡を減らした
主要評価項目は100人年あたりClass 1で-3.5,Class 2 で-3.6,Class 3で-7.9
どの群でも一貫して効果が観察された(Class 3 で一番主要評価項目の減少がみられた)
脱落は群で特に変化なし
 
という結果でした。
このPopulationをもうすこし分解したいと思います。
 
□Population
 
NYHAⅡ以上
EF40%以下
NT-proBNPが600以上(Afの場合は900,入院歴ある場合は400)
除外基準:症候性低血圧,SBP<95mmHg,急性非代償性心不全,登録4習慣前の急性非代償性心不全の入院,12w未満の心筋梗塞,狭心症,脳卒中,TIA,最近ないし冠動脈血行再建の予定がある人,弁膜症修復術,CRTD,心臓移植の既往や予定,補助装置植え込み後,eGFRが30ml/min未満や腎機能低下傾向,1型糖尿病,予後2年未満,活動性の悪性腫瘍,研究の遵守が難しい人
 
 
□Frailty indexの解釈に関して①
 
Frailty indexとは...という人も多いと思います
 
Frailty/虚弱の判定には2種類あります
(Frailty/虚弱、と、フレイル、は違う意味で使われることもあるのですがここでは同一で扱います)
 
表現型といってJ-CHSの5項目で採用されているようないくつかの項目をみたしたらフレイル、という方法
 
もう一つは欠損累積モデルといって30とか40とか70とか包括的な因子をカウントとして、20/40ならFrailty indexを0.5とする方法になります(1.0が一番重症です)
 
今回はRockwoodの欠損累積モデル、というのと使って32項目で算出しています。表現型と違って虚弱の程度を数値化できるのが強みです。
 
□Frailty indexの仕切りに関して
 
Frailty indexは0.21以下,0.211-0.31,0.311以上の3群に分けています
 
0.21で分けた根拠の文献は
Arch Gerontol Geriatr. May-Jun 2015;60(3):464-70. になります
 
FIが0.10から0.21をVulnerable(脆弱)
FIが0.21-0.45をFrail
FIが0.45以上がMost frailとしている
 
 
0.31で分けた根拠の文献は Eur J Heart Fail. 2020 Nov;22(11):2123-2133. になるようです。
 
Frailtyの分類方法の1つであるClinical frilty scaleではVulnerable(脆弱)はCFS 4相当になります。
 
 
なのでCFS 4 vs 5-6相当 というような感じなのかなと想像しました。
(除外基準も結構厳しいですのでFrailty/虚弱として軽度〜中等症くらいの人の研究なのかなと思いいました)
 
いずれにせよ、Frailtyを欠損累積モデルで評価して層別化して、それでも有用だった、というのを解析したという点においても非常に素晴らしい研究結果だと思いました😊
(脱落は群で特に差がなかったのも密かに嬉しい結果だと思っています)
 
 
 

【NOTE】ホスピタリストのエビデンス

新しく立ち上がった病院総合診療医学会の良質な病棟診療WGで運営し始めたNOTEに、「ホスピタリストのエビデンス」に関しての記事を書かせていただきました!!

興味ある方はぜひ御参照いただければ幸いです😊

 

note.com

【JC】β-blockerの終末期の中止の現状(J Am Geriatr Soc. 2022 ;70(1):200-207)

◯β-blockerの終末期の中止の現状
Discontinuation of beta-blockers among nursing home residents at end of life
J Am Geriatr Soc. 2022 ;70(1):200-207

 
◯Introductionより抜粋

β-blockerは有用性とともに起立性低血圧,転倒,運動耐容能の低下など低血圧や徐脈を媒介とする重篤な有害事象を引き起こす可能性の指摘もある
心筋梗塞後でβ-blockerが投与された場合でも.低血圧による入院,機能低下との関連が示されている

そのため終末期におけるβ-blockerのメリットデメリットは不明
施設入所者の全国的なコホートを使いどのような患者で中止されているかどうかを調査した研究
 
◯Result & Conclusion
・死亡1年前の後ろ向き観察研究
・88,204人,平均年齢は84.1歳で 69.2%が女性であった。
・68.6%が人生の最後の45日間もβ-blockerを使用していた。虚血性心疾患,急性心筋梗塞,慢性心不全,心房細動のどれか4疾患があった患者は65.6%だった
・心臓疾患の診断の有無にかかわらず,β遮断薬の中止パターンに差はなかった.
予後不良と判断された患者は早くβ-blockerが中止される傾向があった(29.1% vs 14.4%)
 
・終末期でもβ-blockerの中止率は3割,全体の中で半数近くが終末期でもβ-blockerを飲んでいた(どちらの群でも心疾患の既往があるのは2/3)
・予後が短いと臨床医が判断した症例では中止されやすい傾向だった
 
ということで、β-blockerの内服率高いなぁと思いつつ...なかなかおもしろい研究結果だと思いました
 
非癌慢性疾患の終末期の原則は基礎疾患の治療なので...なかなか悩ましいところではありますが,転倒や起立性低血圧が顕著に関連しているのであれば症例に合わせて減量や中止はありなのかなとか思います
 
あとはカルベジロールで起立性低血圧が目立つならβ選択性が高いものに変える...とかですかね

【JC】Cervical angina(頚椎症性狭心症?)に関して

「Cervical angina」
狭心症に似た症状をおこしうる頚椎の障害に由来する前胸部痛の1
外来でこれっぽい人がいたので復習がてら確認してみました
 
頚椎病変の好発部位や、痛みの場所によって色々パターンをとりうることがわかって勉強になりました😊

 

 

Cervical Angina: A Literature Review on Its Diagnosis, Mechanism, and Management.
Asian Spine J. 2021 Aug;15(4):550-556.

 
□症状
 
痛みは鋭い痛み,押しつぶされるような痛みなどの表現
持続時間は5s未満から30分以上まで色々
発作性のこともあれば持続性のことも
 
関連症状として頸部痛や上腕の神経症状や後頭部の痛みが含まれる
患者の半数に呼吸困難,嘔気,めまい,複視などの自律神経症状をきたすという報告もある
 
症状のパターンとして
左側の胸痛の症例は神経根症状を伴いやすい
後胸骨部や心窩部の痛みでくる症例や自律神経症状を伴う症例は脊髄症を伴いやすい
というのがある
 
 
診断のためには心疾患の除外が必要
頸部画像はCervical anginaの診断のために重要な証拠でありMRIが推奨される
 
MRIは、椎間板ヘルニア、脊髄圧迫、または椎間孔の侵襲を含む頸椎の退行性変化を示すことがある。病歴、検査、画像所見が一致すれば、頚部狭心症の診断が可能である。
好発部位はC5/6,次にC6/7,その次にC4/5
背景疾患は10例の報告では6例ヘルニア,3例頚椎症性頚髄症,1例OPLL
Luschka関節の骨棘がCervical anginaの原因の可能性もあるが今後の研究が必要

診断的椎間板造影や選択的神経根ブロックは、頸部狭心症の診断に有用な手段だが侵襲的な検査ではあるので、手術を考慮する患者で検討する
 
□治療
 
ほとんどの人が保存的な治療でうまくいくとされており,少なくとも3mの保存的な治療が推奨される
牽引や頸部の固定が有効なこともある
理学療法,NSAIDs,筋弛緩剤なども報告がある
 
保存的な治療でうまくいかない場合や神経圧迫による症状が明らかな場合は外科的介入が推奨されることがある
 
 
□Table 2より症状のパターン
 
□Common
 
①前胸部痛は腕の神経根症(痛みやしびれ)を伴いやすい
②左前胸部痛は「頸部の痛みや圧痛」「頭痛」「自律神経症状(呼吸困難,吐き気,めまい,複視,発汗など)」などを伴いやすい
 
□Less common
 
胸骨下の痛みの症例は腱反射の亢進や減弱を伴うことも
胸骨後の痛みの症例は筋萎縮を伴うことも
肩甲骨部の痛みの症例は硝酸薬で緩和で緩和されることも
右胸痛の痛みのこともある