ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】多汗症の鑑別は?

J Am Acad Dermatol. 2019 Sep;81(3):657-666.
多汗症の鑑別は?ということで調べてみました

 

●個人的ポイント


アメリカのアンケート研究では4.8%に多汗症があると考えられる
医療者に話すのは4割程度なので診断されていない人が多い,QoLが低下し,抑うつや不安の頻度が増える

多汗症のうち93%は原発多汗症,ただし二次性の除外が必要なので発汗のパターン,発症年齢,誘引,持続時間,頻度,量,分布,寝汗,家族歴,および二次的な原因を示唆する症状の確認が大事
二次性多汗症を疑う所見は全身性,非対称性,片側性,夜間症状,25歳以降の発症,家族歴がないなど


原発多汗症の特徴

正常なエクリン汗腺が神経因性に過活動するのが原因と考えられている。汗腺のサイズ、数、組織学的外観に変化はない。

原発多汗症を診断する前に二次性多汗症を除外する必要があるが,ルーチンでの臨床検査は必要ない

14歳から25歳の間に発症しやすい(どの年齢でも発症しうる)
90%は腋窩,掌,足底,顔面などの好発部位に「両側性・局所性」の分布をきたす
一番多いのは腋窩51%,他に測定30%,掌24%,顔面10%(腋窩+掌 18%,手掌+足底 15%)
思春期の発症だと掌や測定に多い,稀な部位のパターンもとりえる
環境要因,感情要因,身体活動などで誘発される
夜間には通常発症しない
汗の検査は臨床目的ではあまり使われない

□二次性多汗症の鑑別

全身性のことが多いが局所性のこともある
一般的に25歳以降に発症し,家族歴はなく,しばしば夜間発汗を伴う
原発多汗症とは対照的に二次性多汗症は非対称性,片側性,または全身性である。
体重減少,発熱,リンパ節腫脹などの関連症状があれば二次性を疑う
全身性多汗症原発性では稀
二次性多汗症を疑う所見は非対称性,片側性,夜間症状,25歳以降の発症,家族歴がない

●二次性多汗症の鑑別

生理的:暑さ,発熱,妊娠,閉経
悪性腫瘍:リンパ腫,骨髄増殖性疾患
感染症:急性感染,TB,マラリア,ブルセラ,HIV
内分泌/代謝:糖尿病,血糖異常,尿崩症,甲状腺機能亢進症,褐色細胞腫,末端肥大症,下垂体亢進症,カルチノイド症候群
心血管:感染性心内膜炎,うっ血性心不全,心血管ショック
呼吸:呼吸不全
神経:脳卒中,パーキンソン病,精神疾患
薬剤性:抗うつ薬(TCA,抗精神病薬,SSRI,抗不安薬...),抗菌薬(CPFX),抗ウィルス薬(ACV),血糖降下薬,トリプタン,解熱薬,NSAIDs,制吐剤,カテコラミンやコリン作動薬,アルコール,コカイン,ヘロイン

□局所性の場合の鑑別
非対称性の局所の多汗:局所性神経疾患,腫瘍,Frey症候群,汗腺母斑
局所性二次性多汗症:悪性腫瘍,末梢神経障害,脊髄病変,脳卒中