ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】病棟評価で毎日ルーチン診察する意義は?①(J Hosp. Med. 2021 September;16(9):568-569)

衝撃的なタイトルなので読まずにはいられなかったのですが...

意義の低い診察(例:蜂窩織炎で入院した人に毎日胸部聴診を行う)をするくらいであれば,ベッドサイドの時間を患者さんとの対話,問題点の共有や不安や希望などを話す時間に使いましょう、という話しでした

 

いろいろな意見もあるとおもいますが...個人的には、意義や鑑別を考えずに漫然と診察をする、というのはあまり好きではないのでこのPERSPECTIVESはささりました😊

(無限ではない時間をどう使うか、という観点でも大事だと思いました)

 

異議あり!!のPERSPECTIVEがあり次に続きますっ!!

Point: Routine Daily Physical Exams in Hospitalized Patients Are a Waste of Time
J Hosp. Med. 2021 September;16(9):568-569.

患者に毎日ルーチンの身体診察を行うこともあるがこの伝統的な儀式はよく言えば時間の無駄であり,悪く言えば有害である

身体診察は19世紀から発達してきた分野であり,現代においても予測の高い診断ツールの1つであり,エビデンスもしめされている。また心不全患者のボリューム評価など身体診察は病棟での重要な評価の1つである。

ただし,目的からはずれたルーチンの身体診察は意義の低く,ときには有害にもなり得る
蜂窩織炎で入院した人に胸部聴診を行うのは「スクリーニング」になる
入院患者での研究はないが外来患者におけるスクリーニングで有用な身体診察はほとんどない

入院患者に定期的なルーチンの身体診察を必要とするエビデンスはない
「安価」で「迅速」であるのでエビデンスの有無にかかわらず実施すべきであるという意見もあるが、ルーチンの身体診察が費用対効果に優れているかというとそうでもない(外来で看護師が55歳以上の人に1人1分の触診を行うと数千ドルになる)
スクリーニングの身体診察で余計な検査が発生することも有る(腹部の触診からのAAAの検査)

研修医がベッドサイドで過ごす時間は10%未満と言われている(Acad Med. 2016;91(6):827-832)
この貴重な時間を意義の低いルーチンの診察に割くのではなく,患者さんの症状や不安や本人を知るためや,患者さんと向き合って問題点を話し合う時間に使うべきである

などなど記載がありました
患者さんの期待や「儀式」としての見方に関する考察などもかいてあり勉強になりました