ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】膵臓癌の診断遅延に関連する要素

きっかけがあって調べてみました

新規発症の糖尿病、既往歴や家族歴の丹念な聴取は大事だなと思いつつ...そうはいってもなかなか難しい問題だなと思います


Initial Misdiagnosis of Proximal Pancreatic Adenocarcinoma Is Associated with Delay in Diagnosis and Advanced Stage at Presentation
J Gastrointest Surg. 2015 Oct;19(10):1813-21.

後ろむき 10年 313人の膵臓癌
膵臓癌の誤診は31.3%で生じている
TOP3は胆嚢疾患,GERD,消化性潰瘍
黄疸をきたすと見逃されにくい

Symptoms and patient factors associated with diagnostic intervals for pancreatic cancer (SYMPTOM pancreatic study): a prospective cohort study
Lancet Gastroenterol Hepatol. 2016 Dec;1(4):298-306.

早期診断に有用な初期症状はみつけられなかったが、黄疸、倦怠感、便通の変化、体重減少、食欲低下の続発症状は膵臓癌の予測に有用だった

黄疸や食欲低下の人は早期に診断されやすい
糖尿病があったり精神疾患があると診断が遅れやすい
プライマリケア医は非典型的な消化不良や全身症状を伴う高齢者の消化不良に対して精査を考慮してもよい


◯日本での早期膵臓癌の診断の実態(Pancreatology.2018;18:61-67)

69.5%の症例がリスクが1つ以上あった(糖尿病と喫煙が多い)

腹痛で診断されるのは25%
他疾患の観察やスクリーニングが51.5%
検診での異常 17%

■膵癌診断契機としての糖尿病

Model to Determine Risk of Pancreatic Cancer in Patients With New-Onset Diabetes
Gastroenterology. 2018 Sep;155(3):730-739.e3

新規発症糖尿病における膵臓癌リスクをスコア化

□血糖値の変化
1年前の血糖
<100 :+1
100-109 :+2
110-125 :+3
新規発症時の血糖カテゴリー
126-160 :+4
>160: +5

□1年前からの体重変化(-6から+6)

-6.0kg以上 +6
-5.9から4.0 +4
-3.9から2.0 +2
+2.0から3.9 -2
+4.0から+5.9 -4
+6.0 -6

□新規発症糖尿時の年齢(-1から+1)
59歳以下 +1,70歳以上 -1

3項目をたして3点以上で感度80%特異度80%で膵がん診断
外的妥当性の検証の結果では感度62.6% 特異度 78.6%でした(Dig Dis Sci. 2021 Jan;66(1):78-87.)

糖尿病の新規発症(特に新規に糖尿病を発症したにもかかわらず体重が減少した症例)や糖尿病のコントロール不良、膵臓癌のリスクの認識(家族歴,喫煙歴,慢性膵炎,膵嚢胞性疾患)、などは膵臓癌の診断にきっかけになりえるとは思います。


どこまでが現時点で達成可能なラインなのかや...早期診断で予後が変わるか...に関しては色々な論文がでていますが

Benefits Of Timely Care In Pancreatic Cancer: A Systematic Review To Navigate Through The Contradictory Evidence
Cancer Manag Res. 2019 Nov 19;11:9849-9861.

(もちろん診断以外の面でも)診療の質の精度をあげる、というのは医療者としての当然の矜持ですし、システマティックレビューをみるかぎりでもTimely diagnosisへの努力は継続するべきなのかなと思います

【JC】せん妄評価ツールとしての3D-CAMに関して

4-ATついでに以前から興味があった3D-CAMに関しても調べてみたところ...CAM-ICU vs 3D-CAMの研究や日本語版があることなど色々勉強になりました😊

 

①3D-CAM: derivation and validation of a 3-minute diagnostic interview for CAM-defined delirium: a cross-sectional diagnostic test study
Ann Intern Med. 2014 Oct 21;161(8):554-61.

201人が対象(平均84歳、認知症は21%)
3D-CAMの感度95%特異度94%
認知症(+)では感度96%特異度86%
認知症(-)では感度93%特異度96%

②Detection of Delirium in Hospitalized Older General Medicine Patients: A Comparison of the 3D-CAM and CAM-ICU
J Gen Intern Med. 2016 Mar;31(3):297-303.

75歳以上の入院中の一般内科患者。
3D-CAMは感度95%特異度90%以上
CAM-ICUは感度53%特異度90%以上
軽度のせん妄患者ではCAM-ICUは感度30%,3D-CAMは感度100%

ということで一般内科病棟ではCAM-ICUより優れており,3分でおわり,診断精度も高いという優れもののようです😊


その他の報告として重症度評価にも使える(J Am Geriatr Soc 2016;64: 1684–1689)という報告もあるようです


中国語での検証(BMC Psychiatry. 2020 Mar 24;20(1):133.)
フランス語での検証(Can J Anaesth. 2022 Mar 25. doi: 10.1007/s12630-022-02232-1. Online ahead of print.)

などがすすんでいるようです

CAM-ICUの日本語は

https://americandeliriumsociety.org/ags-cocare-cam-and-help-tools-3d-cam-includes-3d-cam-s-severity/

 
の「Japanese」で閲覧可能です
 
個人的に20(+2)も項目があるなんて...と最初は思っていたんですが、実際に見てみると質問する項目は「10個まで!!」で上記のページのTraining manualには実践時の注意点が書かれております😊
 
いままで日本語訳Versionの存在はしらなかったので、自分のPracticeを見直す良い勉強になりました😊

【JC】せん妄スクリーニングツールとしての4-AT

チームで低活動型せん妄に関してディスカッションになったついでに調べてみました②

4-ATに関して+低活動型せん妄に関しての前置き(長文)になります😊
 

低活動型せん妄に関しての前置きです


□低活動性せん妄に関して(BMJ. 2017 May 25;357:j2047)
(完全に抜粋です,色々大事な部分を割愛しているのはお許しくださいっ!!)

低可動型せん妄は、興奮したり、そわそわする、などが主な症状の過活動型せん妄とはことなり、混迷や活動低下が主な症状になります(個人的には入院中の食欲低下/リハビリ意欲低下/活気低下に必ず鑑別にあげるようにしています)

低可動型せん妄は診断がされにくく、過活動との混合型も存在するのもその一因になります。

「せん妄」なので、ベースラインからの急性変化があり、注意力障害や認知能力障害を伴います
症状の変動は日内変動があり、数時間から数日で発症します

患者さん自身にとっても低可動型せん妄は理解できない体験,恐怖体験,強い情動をもたらし,43%の患者さんがその出来事を思い出すと言われています
さらに死亡率の増加,施設入所など有害転機と関連しており早期診断や予防は極めて重要といえます


低可動型せん妄の有頻度は高くほとんどの医療機関で10人に1人はいるといわれています。主な報告をまとめると以下のようになります。

精神科リエゾン症例:6-32%
ICU:36-100%
高齢者:13-46%
股関節骨折:12-41%
緩和ケア:20-53%


■低活動型せん妄が見逃されやすい理由

□疾患的な理由
・本人が内向的になり訴えられない(家族や介護者がおらず,患者さんが孤立しているとさらにわかりにくい)
・症状は変動しうるもので,正常に近い時期に評価をうけることもある
□医療制度的な観点
・ケアの継続性の欠如,医療記録へのアクセス(薬剤歴,入院歴,危険因子に関する情報,感覚障害)
・プライマリ・ケアや二次医療圏で緊急性があると判断されず評価が遅れる
□患者素因
・高齢者は孤立しやすい
□医療者素因
・高齢者は物忘れや見当識障害がおきても普通
・過活動型せん妄が診断に必須である or 過活動度が重症度に関連
・患者さんにとって認知機能検査は不快なもの
・低可動型せん妄は不可逆的
・低可動型せん妄は病気の進行という状態から患者を守るのに有用

ということで...前置きが長くなりましたっ!!

この文献ではシステマティックレビューの結果スクリーニングツールに推奨されているのは
(Gerontologist 2015;55:1079-99.)

4A's テスト(4AT)(Age Ageing 2014;43:496-502.)
NuDESC(J Pain Symptom Manage 2005;29:368-75.)

の2つでした。

 

4-ATは

Diagnostic accuracy of the 4AT for delirium detection in older adults: systematic review and meta-analysis
Age Ageing. 2021 May 5;50(3):733-743

高齢者にたいするせん妄 17件 3702人が解析対象
高齢者におけるせん妄の検出に関して感度88%特異度88%
脳卒中の研究を除くと感度86%特異度89%

Diagnostic Test Accuracy of the 4AT for Delirium Detection: A Systematic Review and Meta-Analysis
Int J Environ Res Public Health. 2020 Oct 15;17(20):7515.
13試験の計3729人の患者が解析対象
4ATはせん妄に対して感度81.5%特異度87.5%
せん妄のスクリーニングに有用

 

となかなかに有用という報告です。

(ただしスクリーニングや検出、という目的であって、診断、ではない?のが弱点かもしれません)


4ATは日本語版(4AT-J)が検証されており(Asian J Psychiatr. 2022 Jan; 67: 102918),中身も公開されています

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34798384/


https://www.m.chiba-u.ac.jp/class/psy3/education/4at-j.html
https://www.m.chiba-u.ac.jp/class/psy3/education/index/the4at-j.pdf

これらは特別な訓練を受けなくても多忙な臨床現場で使えることが検証されています

日本語Versionで検証済みというのはありがたい話ですね😊
 

【JC】低活動型せん妄に対するアリピプラゾール

チームで低活動型せん妄に関してディスカッションになったついでに調べてみました(今回はアリピプラゾールに関して)

 

①An open trial of aripiprazole for the treatment of delirium in hospitalized cancer patients
Palliat Support Care. 2011 Dec;9(4):351-7.

担癌患者21例のせん妄に対するアリピプラゾール
約半分が進行期

せん妄の原因はオピオイド90%,ステロイド52%,低酸素血症38%,感染症9%,代謝性疾患100%,中枢神経疾患33%
21人中9人が低可動型せん妄

アリピプラゾールの投与量は5-20mg/d,最大30mg/dで投与
→平均 15mg/dで開始 1日1回午前中
→Day 2-3で66.7% (平均16mg/d)
→Day 4-7で100% 効果があった (平均18.3mg/d)

②Aripiprazole and haloperidol in the treatment of delirium
Aust N Z J Psychiatry. 2011 Jun;45(6):477-82.

アリピプラゾールの平均初回投与量は15.2mg、平均投与量は18.3mgであった

低可動型せん妄の解消率は
アリピプラゾールは100%
ハロペリドールは77.8%

錐体外路症状ハロペリドール>アリピプラゾール

Delirium and its treatment
CNS Drugs. 2008;22(8):631-44

低活動型せん妄の治療で独自の役割がある
投与量は5-30mg/d で報告がある(Psychosomatics 2006; 47 (5): 385-91, Int J Psychiatry Med 2005; 35 (4): 429- 33)

④Pharmacologic Treatment for Hypoactive Delirium in Adult Patients: A Brief Report of the Literature
J Am Med Dir Assoc. 2021 Jun;22(6):1313-1316.e2

成人(18歳以上)および老年期の患者における低活動性せん妄に対するさまざまな薬物療法を評価した報告を対象としたレビュー

52件の関連論文のうち、選択基準を満たしたのは4件のみであった。

ハロペリドール、ジプラシドン、アリピプラゾール、メチルフェニデートの4種類の薬理学的治療が使用されていた。アリピプラゾールは低活動性せん妄の完全な解消を示し(P < 0.001)、メチルフェニデートは認知機能の有意な改善を示した(P < 0.001)。ジプラシドンとハロペリドールプラセボと比較して有意差を認めなかった。


アリピプラゾールとメチルフェニデートは、低活動性せん妄の治療において有望な結果を示した。

アリピプラゾールの引用文献で使われたのは前述の2つの研究でした
Palliat Support Care. 2011 Dec;9(4):351-7.
Aust N Z J Psychiatry. 2011 Jun;45(6):477-82.

 
ということで低活動型せん妄に対するアリピプラゾールの報告はあるが、まだその有用性に関してはまだまだ不明?、というところでしょうか
 

【JC】副腎不全の診断エラーの報告

調べる機会があったので副腎不全の診断エラー関連まとめてみました
random コルチゾールのオーダーの閾値の設定などこのへんは色々と難しいと日々感じます。。。



Primary adrenal insufficiency in the United States: diagnostic error and patient satisfaction with treatment
Diagnosis (Berl). 2019 Nov 26;6(4):343-350.

副腎不全の診断を受けた541人のアンケート研究

半数以上の患者が初期診断に至るまで苦労したと答えた
診断されるまで平均3.5人の医師の診察を受けた
46%の患者が「健康を気にしすぎ」または「身体的な問題がない」と言われた
30%が精神的なカウンセリングを受けるように勧められた
18%の患者は心気症,うつ,不安障害などの診断をうけた


Delayed diagnosis of adrenal insufficiency is common: a cross-sectional study in 216 patients.
Am J Med Sci 2010; 339: 525–31.

原発性副腎不全(99人)と二次性副腎不全(117人)の解析
(疾患の詳細は省略)

47%が発症して1年以内に診断
20%の患者さんは 診断されるまでに5年かかった
男性に比べ、女性は有意に診断が遅かった

初期診断が正しかったのは15%
67%は少なくとも3人の医師に相談し、30%が副腎不全と診断されるまでに5人以上の医師を受診した。

68%の患者で診断エラーが生じ.41%で精神疾患がくだされた
女性や原発性副腎不全の患者で誤診されやすかった

発症3ヶ月以内に正しく診断された患者さんは を受けた患者は、不安のスコアが有意に低く,胃や心臓の症状を訴えることが有意に少なく,手足の痛みや疲弊傾向について言及することも少なかった

【JC:入院中の高血圧に関して】降圧はかえって有害!?

Treatment and Outcomes of Inpatient Hypertension Among Adults With Noncardiac Admissions
JAMA Intern Med. 2021 Mar 1;181(3):345-352.

入院中に強化した降圧管理をするとどうするか、というCQに関しての論文
10病院の多施設後ろ向き研究

内科で入院した患者を対象

暴露は降圧管理(静注も内服も含む)
アウトカム
→入院中のAKI,心筋障害,脳卒中
→退院後の30日以内の脳卒中心筋梗塞
→1年後の血圧管理

結果は...

入院した成人の78%が入院中に高血圧の記録があった
これらのうち33%が治療を受けた
治療を受けた群のうち1/3が静注,2/3が経口

治療を受けた群は静注,経口に関わらず急性腎障害(10.3% vs 7.9%),心筋障害(1.2% vs 0.6%)の割合が高かった
退院1年後の良い血圧管理との関連はなかった


という結果でした

・そもそも入院中はいろいろなこと(痛み,嘔気,ストレス...)で血圧が上がりやすい(J Clin Hypertens (Greenwich). 2011;13(11):836-842)。今回の研究でも成人の7割で血圧上昇の確認がされた。
・入院中の高血圧の治療のメリットは不明(J Hosp Med. 2016;11(3):193-198)
・IV製剤での有害事象の報告はある(J Hosp Med. 2016;11(3):193-198.)が,今回の研究は経口でも起きていた

・今回の研究ではほとんどの患者で再検したら血圧が下がっていたので4時間後フォローでもよいかもしれない
 


入院中の高血圧に関してはこちらも御参照いただければ幸いです😊

https://generalistcwtg.hatenablog.com/entry/2021/11/04/091601
https://generalistcwtg.hatenablog.com/entry/2021/11/09/093247


なお,退院直後の降圧強化はNegative studyが出ていますのでこの辺も興味ある方はぜひこちらの文献もおすすめです
JAMA Intern Med. 2019;179(11):1528-1536.
BMJ. 2018;362:k3503.



ということで、後ろ向き研究なので目標降圧など詳細は不明ではありますが、入院中や退院時の降圧管理は頑張りすぎないほうがよい、という雰囲気です。
(とはいえ未治療の高血圧の人もいるのでかかりつけへの紹介/フォロー依頼はしたほうがよいと思います)

【備忘録:小児頭部外傷】 BEYOND the PECARN rule

現在勤務している病院では2015年に救急外来で小児頭部外傷に関しての診療マニュアルを作って運用をしていました。そして昨日行った小児科の先生との合同勉強会にあわせて、最近の流れはどんな進化しているのか調べてまとめてみました😊


□PECARNルールに関して(Lancet 2009;374:1160-70)

○2歳未満のManagement(すべてなければCTは非推奨)

◇Major項目(該当すればすぐにCTを推奨,4.4%でciTBI)
・GCSが14ないし意識変容の症状(興奮,傾眠,同じ質問の繰り返し,反応が鈍い)がある
・頭蓋骨骨折の触知

◇Minor項目(CTを考慮する因子,0.9%でciTBI)
・前頭部以外の皮下血腫
・5s以上の意識消失
・高エネルギー外傷(90cm以上の転落,自動車から投げ出された,強い勢いで打った,ヘルメットなしで自転車にのってぶつかった,同乗者の死亡)
・親からみていつもと違う

※CTは症状や所見の悪化の有無,所見が単一か複数か,生後3ヶ月未満か,医師の裁量,親の希望などを考慮して適応を判断


○2歳以上18歳未満のManagement(すべてなければCTは非推奨)

◇Major項目(該当すればすぐにCTを推奨,4.3%でciTBI)
・GCSが14ないし意識変容の症状(興奮,傾眠,同じ質問の繰り返し,反応が鈍い)がある
・頭蓋骨骨折の触知

◇Minor項目(CTを考慮する因子,0.9%でciTBI)
・意識消失
・嘔吐
・高エネルギー外傷(150cm以上の転落,自動車から投げ出された,強い勢いで打った,ヘルメットなしで自転車にのってぶつかった,同乗者の死亡)
・重度の頭痛

※CTは症状や所見の悪化の有無,所見が単一か複数か,医師の裁量,親の希望などを考慮して適応を判断


□小児頭部外傷およびPECARNルールに関してのエビデンス

・PECARNルールで該当項目がない場合ciTBI:clinically-important traumatic brain injuries(外傷性脳損傷による死亡、脳手術、24時間以上にわたる気管内挿管、2泊以上の入院)がある確率は2歳未満で0.02%未満,2歳以上で0.05%未満(Lancet. 2009 Oct 3;374(9696):1160-70)
・嘔吐1回のみであればciTBIは0.2%5)であり,嘔吐1回であればCTは不要(Evid Based Med. 2015 Feb;20(1):32)
・PECARNの該当項目が意識消失のみであればPECARN陰性の小児とciTBIのリスクは同等であった(JAMA Pediatr. 2014 Sep;168(9):837-43.)
・救急外来で経過観察(2-4h)をすることによって安全にCT撮像を減らせる(Ann Emerg Med. 2013 Dec;62(6):597-603.Pediatrics. 2011 Jun;127(6):1067-73)
・受傷6時間以降で新規の頭蓋内出血はほぼない(Pediatrics.2010;126:e33)


□小児頭部外傷およびPECARNルールに関してのエビデンス②(頭部外傷に関して)

✓PECARN vs CHALICE vs CATCHで無事PECARNが最も優れている(Lancet. 2017 Jun 17;389(10087):2393-2402.)

✓嘔吐単独であればCTでの頭蓋内損傷(0.6%),臨床的な頭蓋内損傷(0.3%)と極めて稀であり,すぐにCTをするのではなく経過観察がよいのではないか(Pediatrics. 2018 Apr;141(4):e20173123)

✓高速MRI(中央値約6分)の有用性の評価の研究。CTで所見があった患者のうち92.8%でMRIでも所見が認められた。臨床的に安定しているが頭蓋内損傷の懸念がある小児に対してMRIは有用(Pediatrics. 2019 Oct;144(4):e20190419.)

□小児頭部外傷およびPECARNルールに関してのエビデンス③(頭部CTをへらす工夫)

✓非小児科救急病院にPECARNルールを導入したところ頭部CTの使用は減少。全体として38%が17%,低リスクは23%が1%に(Acad Emerg Med. 2019 Jul;26(7):784-795)

電子カルテに臨床意思決定支援ツールを組み込むと安全に頭部CT使用率が減少した(OR 0.73)(Ann Emerg Med. 2019 May;73(5):440-451.)

✓経過観察を導入することにより頭部CTの撮像が減少した(全体でOR 0.2)(Acad Emerg Med. 2020 Sep;27(9):832-843.)
→低リスク(PECARN該当なし): OR 0.9
→中リスク(PECARN minor該当あり): OR 0.2
→高リスク(PECARN major該当あり): 0R 0.1


PECARNをベースにいかに安全に無駄な被曝を避けるか...が少しづつ進んでいるのがわかりますね

個人的にはポイントは「経過観察」と「環境とシステム」かなーとおもっています
もちろん相互には絡みますが、前者は個人の工夫、後者は組織や制度の工夫、でしょうか😊