ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

診断関連

【JC】多汗症の鑑別は?

J Am Acad Dermatol. 2019 Sep;81(3):657-666.多汗症の鑑別は?ということで調べてみました ●個人的ポイント アメリカのアンケート研究では4.8%に多汗症があると考えられる医療者に話すのは4割程度なので診断されていない人が多い,QoLが低下し,抑うつや不安…

【JC】Convulsive syncope(痙攣性失神?)とは!?

Convulsive syncopeとは!?(正式な和名がわかりませんでした...)多いのは迷走神経反射に伴ってですが...失神をきたすような脳血流低下状態で痙攣が起きうることを知っておくことは大事です。 でないと「迷走神経反射で失神する→倒れる前に誰かが支える→痙攣」…

【JC】痙攣 vs 失神 を見分ける病歴/Calgary Syncope Symptom Scoreの精度は?

痙攣 vs 失神 を見分ける病歴といえばCalgary Syncope Symptom Score(J Am Coll Cardiol. 2002;40(1):142-148)が有名です。これはどれくらい有用なのか?というのを調べてみました。 追加の検証研究だとちょっと微妙そうです。。 Historical criteria that d…

執筆報告:総合診療の「High yieldな症候学」

楽しみにしていた総合診療の「High yieldな症候学」ようやく読破しました!!https://www.amazon.co.jp/dp/B095GS5G12/知らないものももちろん、名前は知っているけど詳しくはしらない(+そしてそこが知りたかった)、という項目があり学びになりました自分は「H…

【JC】脳卒中後の発熱に関して

脳卒中後(脳梗塞や脳出血後)の発熱/微熱って中枢性なのか感染症なのか、ふくめ結構悩みどころだと思っています。過去に調べてうまくいかなかったのですが、リベンジしてみました。 いくつかの探索的検索でひっかかった文献の抜粋になります □脳卒中による発…

【JC】前庭性片頭痛に関して

□前庭性片頭痛に関してmigraine-associated vertigo ではなく vestibular migraineのほうが主流っぽいということを先日後輩から学びました個人的には末梢性めまいの頻度はBPPV>前庭神経炎>前庭性片頭痛と思っているので、それなりに重要だと思っていますと…

【JC】ALS関連で,診断遅延を短くするには?(Neurol Res Int. 2020 May 11;2020:1473981.)

前回にひきつづきALS関連で,診断遅延を短くするには?(Neurol Res Int. 2020 May 11;2020:1473981.)の内容です。 ALSの症状4パターンの把握とRed flag「進行性の構音/嚥下障害」「(特に左右非対称性の)進行性の局所の筋萎縮」 の早期認知がやはり鍵なのと、…

【JC】ALSの診断までの時間と初回診察に関連する因子(J Neurol Sci. 2020 Oct 15;417:117054.)

ALSの診断までの時間と初回診察に関連する因子(J Neurol Sci. 2020 Oct 15;417:117054.)の抜粋になります。 多く診たわけではないですし、これが鑑別に上がる/鑑別の片隅にのこるときはじわりとくる感覚を覚えます。。診断までのプロセスも、可能性が高いと…

【JC】転倒で介入可能な原因が見逃されている(Ann Emerg Med. 2020 Dec;76(6):730-738.)

転倒ガチ勢によるガチ評価というところでしょうか。転倒で介入可能な原因が見逃されているという研究。頻度が高すぎる!?など色々思うところはある結果ですが,「視力評価の視点は大事」「FRID(fall-risk-increasing drug)への介入はER側だと難しい」とも思い…

WGの活動報告が病院総合診療医学会和文誌「特別寄稿」にアクセプト

勝手にロールモデルにさせていただいている森川先生を見習い、自分の所属しているWGの活動を残す、という作業に取り組んだ結果... 『診断エラーワーキンググループの活動報告および診断エラーの歴史と文化に関する考察』の内容を病院総合診療医学会和文誌「…

【JC】蜂窩織炎の診断困難さのレビュー(Br J Dermatol. 2019 May;180(5):993-1000)

著者がPC医という点でも痺れる蜂窩織炎の診断の難しさを扱ったScoping reviewです(Br J Dermatol. 2019 May;180(5):993-1000) □個人的なまとめ ・薬剤や化粧品使用歴の聴取は大事 ・「抗菌薬不応性」「両側性」の蜂窩織炎は診断見直そう(というか違う) ・症…

【JC】救急外来での蜂窩織炎の診断の正診率は7割程度(JAMA Dermatol. 2017 Feb 1;153(2):141-146)

救急外来での蜂窩織炎の診断の正診率は7割程度(JAMA Dermatol. 2017 Feb 1;153(2):141-146) 診断も大事ですが,それだけじゃなくて原因検索,治療,再発予防...などなど蜂窩織炎は結構難しい/奥が深い疾患と思っています。 Costs and Consequences Associated W…

小脳梗塞の診断エラーに関して(私見こみ)

小脳梗塞はシンプルな小脳梗塞,椎骨動脈解離→延髄外側+小脳梗塞,(散発含む)小脳+他の病変にも梗塞があるなど複数パターンが混在するのと,椎骨動脈解離はこれはこれで難しいので...考えれば考えるほどごちゃごちゃになるのですが... シンプルに ・椎骨動脈解…

【JC】POCNESの特徴を抑える(J Pain Res. 2019 Feb 19;12:715-723)

LACNESに続いてPOCNESに関して ●POCNESに関してのまとめ(J Pain Res. 2019 Feb 19;12:715-723.)・ACNES様の痛みが傍脊椎3-5cm以内の分布にある(ほとんどがTh11と12)・圧痛部位は狭く,感覚異常を伴い,Pinch signは86%で陽性・鑑別診断は神経根性疼痛,脊椎関節…

【執筆】「診断エラー学のすすめ」が発刊しました

「診断エラー学のすすめ」が本日発刊になりました!!「診断エラー」は外来で5%,院内有害事象の6-17%,院内死亡の10%とすごく身近ははずなのに軽視されがちな領域です。しかし,患者安全の領域では最大のTOPICであり,頻度は前述の通りコモンです。診断エラーの存…

【JC 流し読み】病歴聴取の中断に関して②(Time to Listen More and Talk Less J Gen Intern Med. 2019 Jan;34(1):1-2.)

Eliciting the Patient’s Agenda- Secondary Analysis of Recorded Clinical Encounters(J Gen Intern Med. 2019 Jan; 34(1): 36–40.)が掲載されたJGIMの号のEditorialです 病歴聴取に関してすごく勉強になりました (中断の意味に関してはTriple Eや効果的な…

【JC 流し読み】病歴聴取の中断に関して①(J Gen Intern Med. 2019 Jan; 34(1): 36–40.)

病歴聴取の中断に関して(J Gen Intern Med. 2019 Jan; 34(1): 36–40.) すごく有名な18sでの中断研究*1,その後...というJGIMからの研究でした。研究自体は意思決定共有ツールを導入しても患者の懸念事項の聴取の割合は改善しなかったという結果。ほかに中断ま…

【JC】カーネット徴候とClosed eye signの有用性は?(Am J Emerg Med. 2020 Dec;38(12):2759.e1-2759.e4.)

カーネット徴候の存在を知って全例ルーチンでとるようにしたら最初に陽性になったのが虫垂炎の症例だったのは一つの思い出です腹痛のフィジカルは単一の情報に飛びつくのではなく,症例や状況によってどう使うか/解釈するか、が醍醐味なのかなと思っています …

【JC】DOAC内服でループスアンチコアグラントが偽陽性

DOAC内服でループスアンチコアグラント(LAC:lupus anticoagulant)が偽陽性になるようです。いままで知りませんでした。。。すみません。。。 (というか,これって結構わからん殺しの予感がっ!!?) そもそも症状はどうなのか、陽性はLACのみで他は大丈夫なのか(…

「救急診療の好手・悪手」で「NOMIやSMA閉塞」を執筆させていただきました

楽しみにしていたMedicinaの救急診療の好手・悪手ようやく読破しました!!自分の好きな本の1つの「ERエラーブック」とにたようなイメージで,様々なトピックでコンパクトにpitfallとおすすめの一手がまとまっていて読みやすかったです。 https://www.amazon.co…

「症候診断ドリル」で「黄疸」を執筆させていただきました

楽しみにしていた本「症候診断ドリル」こちらもようやく読破しました!!読みやすい+基本がしっかり抑えられているのと,ところどころ深掘りされているので勉強がある程度おわったなと思っていた症候の復習にもなりました(勘違いしていただけという説も)https:/…

【JC 流し読み】高齢者の薬剤に関してのupdate@2019

Medication Use Quality and Safety in Older Adults: 2019 UpdateJ Am Geriatr Soc. 2021 Jan 12. doi: 10.1111/jgs.17018.①Older Medicare Beneficiaries Frequently Continue Medications with Limited Benefit Following Hospice AdmissionJ Gen Intern …

診断関連でLectureさせていただく機会をもらいました

東京北医療センター 総合診療科の岡田先生に声をかけていただき「まったく疾患が思いつかないときの診断推論」をテーマにお話しさせていただく機会をもらいました 途方もない頂を登っている最中の自分でよいのか!?と思いながらもこういった立場だからこそ言…

【JC 流し読み】診断エラーBIG3×TOP5のエラー率と害の発生率 Diagnosis (Berl). 2020 May 14;8(1):67-84.

診断エラーのBIG3:血管,腫瘍,感染これらの疫学に関して新しい文献が出ました先行文献の訴訟データーベースのBIG3はこちらになりますhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31535832/Serious misdiagnosis-related harms in malpractice claims: The "Big Three" -…

心不全のフィジカル(JACC Heart Fail. 2018 Jul;6(7):543-551.)

心不全のフィジカル The Role of the Clinical Examination in Patients With Heart Failure JACC Heart Fail. 2018 Jul;6(7):543-551. 一部のみ抜粋 ●Volumeの評価 心室充満圧に関連する症状や徴候:頸静脈土町,肝頸静脈逆流,起座呼吸,Bendopnea/前屈時呼吸…

利用可能バイアスに関して(Memo)

●利用可能バイアスに関して□vs診断エラーに関して(私見ふくむ)一般論として知識や技術の不足からくる診断エラーは11%(知識が4%,読影などの技術が7%)ということになっています(Arch Intern Med. 2005;165:1493–1499)ですが自験例ふくめどうもそうじゃないんじ…

【JC 流し読み】救急外来での緊張型頭痛の診断は慎重に

Tension-type headache in the Emergency Department Diagnosis and misdiagnosis: The TEDDi studySci Rep. 2020 Feb 12;10(1):2446.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32051440/ ERで緊張型頭痛と診断された211人を解析したとこr,緊張型頭痛の診断基準を満…

【JC 流し読み】入院中に判明する診断エラー(BMJ Qual Saf. 2020 Dec;29(12):1008-1018.)

Prevalence of harmful diagnostic errors in hospitalised adults: a systematic review and meta-analysisBMJ Qual Saf. 2020 Dec;29(12):1008-1018.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32269070/入院中に判明した診断エラー(診断エラーが入院中に明らかにな…

JGFMのPreliminary Reportに診断エラーに関するアンケート研究をのせていただきました

研修医の先生の記憶にのこった診断エラーのケースをDEER taxonomyで解析するとどうなるか?というテーマで行ったアンケート結果,JGFMのPreliminary ReportにアクセプトをいただいたのがPublishされました https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jgf2.…

【執筆】しくじり症例から学ぶ! Difficult Patient対応技法で1例執筆させていただきました

しくじり症例から学ぶ! Difficult Patient対応技法ようやく読破しました https://www.amazon.co.jp/dp/4784973826/ あーあるある、という症例から、突き抜けたような衝撃的な症例まで...読み応え最高でした医師の思考過程がわかりやすく具体的に書いてあり頭…